研究課題/領域番号 |
18K18907
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安藤 晃 東北大学, 工学研究科, 教授 (90182998)
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研究分担者 |
高橋 和貴 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80451491)
小室 淳史 東北大学, 工学研究科, 助教 (70733137)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 電気推進 / Cubesat / スパッタリング / 小型衛星 |
研究実績の概要 |
本研究では,超小型電気推進機の最大の問題である高圧ガスボンベを不要とするために,金属燃料を用いてスパッタリングによる大量質量放出によって推力を発生する新型推進機の原理実証と開発を行う.初年度は小型真空容器の整備と直流マグネトロンスパッタ銃を設計・製作し,アルゴンプラズマによるスパッタリングで推力が発生するかを実験的に検証し,本課題の原理実証と推力計測機の開発などを実施した. 小型真空容器は現有の内径26cmの容器を長さ70cm程度まで延長し,ターボ分子ポンプ排気セットによって10^-4 Pa台まで真空排気することが可能となっている.マグネトロンスパッタ銃からのスパッタリングにより,容器内部がターゲット材料でコーティングされる可能性が高いため,内壁は適宜防着フィルムを装着可能な状態にしてある.真空容器内部には変形振り子型スラストバランスを設置し,低価格LED変位計によってプラズマ発生・スパッタリング誘起に伴う変位を計測することが可能な構造となっている.スラストバランスに既知の力を与えた際に誘起される変位を予め計測しておくことで,推進機作動によって発生する力の絶対値計測を可能とした. ターゲット材料をスパッタリングが起こりやすい無酸素銅とし,マグネトロン放電によって数10W程度の電力でアルゴンプラズマを発生したところ,200 microN程度の推力が得られることが分かった.これがプラズマ生成によるものかスパッタリング現象によるものかを検証するために,ターゲット材料にスパッタ率が低い炭素を用いて同様の実験を行ったところ,同程度の電力を投入しても観測可能な推力は得られなかった.これらの結果より,スパッタリング現象による推力発生が可能であることが実験的に示されたといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していたアルゴンプラズマによる動作試験を行い,実際に推力発生が観測されたため,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,アルゴンプラズマを用いた詳細な実験を進めるとともに,セシウム燃料を用いたプラズマ発生法の開発等を進め,液体金属燃料を用いた革新的電気推進機の原理実証と開発を推進する.特に効率的なセシウム導入法や,液体状金属とプラズマ部の界面科学等,学術としても興味深い点が多数存在するため,萌芽的研究として多角的な視点から研究開発を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
マグネトロンスパッタ銃やスラストバランス等を独自に設計・製作したため開発費を低コスト化することが出来,当該課題の今後の最大の課題であるセシウムを用いたプラズマ発生法の開発に研究費を活用できるよう配慮したため.
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