研究課題/領域番号 |
18K18914
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
川島 英幹 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (20450679)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 弾性表面波 / 音響流 / SAWデバイス / 流体制御 |
研究実績の概要 |
音響流放射のための弾性表面波の発生手段として、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイスを用いて、任意の放射角の音響流を放射出来る流場制御デバイスを開発し乱流境界層を制御し乱流摩擦抵抗を低減することを研究の目的としている。SAWデバイスは、櫛歯型の電極を圧電素材上に形成し、電流を流すことで、表面に弾性表面波を励起する装置である。このSAWデバイスの回路を比較的水に近い音速で圧電性を持つPVDF樹脂シート上に形成する。PVDF樹脂シートの、音速(縦波)は、1444m/s(20℃)であり、水の音速1483m/s(20℃)よりも遅いため、そのままで音響流は水中に放射されない。過去のSAWデバイスの研究例から、圧電素材を別の素材でと層状の構造とし、圧電素材の厚み、電極の幅、入力する電力の周波数を設定することにより、物体表面の音速を制御できることが判っている。そこで、文献調査結果から得られた情報を基に、層状構造とする材料の種類、電極の幅、入力する電力の周波数から,デバイス表面の音速を推定する方法を考案した。その方法を用いて,デバイスの構成及び回路のパターンを設計すると、デバイスの音速と放射される音響流の放射角と流速を推定出来るようにした。本推定方法を用いて、圧電樹脂であるPVDF樹脂上に2.5MHz,5.0MHzの周波数に対応した櫛歯電極回路を形成し、ステンレス基盤に接着するという構造の流体制御デバイスの試作機を設計し、PVDFシートの厚みの違いも合せて4種類の試作デバイスを製作した。そして試作流体制御デバイスを対象として、デバイスの周波数特性の計測及び液滴の駆動試験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
製作した試作流場制御デバイスを用いて、デバイスの周波数特性の計測及び液滴の駆動試験を実施したが、事前に検討した推定方法のよる推定と異なる試験結果となった。そこで、現有の試作デバイスの特性を詳細に調査し、推定式の見直し改良をすること、デバイスの材料や構成についての再検討、試作デバイスの再設計・再製作した上、流場計測・流場制御試験を行う必要があるため、その分遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
現有の表面制御装置の試作デバイスの特性を詳細に計測し、ハイブリッド構造デバイスの音速の推定方法とデバイスの設計法を改良する。改良した手法に従い、改良型の試作デバイスを製作する。試作したデバイスの特性計測を行い、液滴の駆動試験を行った後、弾性表面波による音響流の放射角・速度の制御方法について検討する。開発した表面制御装置を完全発達した乱流境界層での実験が可能な小型高速流路に設置し、乱流境界層の流場制御試験を行い、PIVによる流場の計測と、剪断力計による摩擦抵抗計測を行い、流場制御方法の適否、音響流の放射角、流速の推定方法の検証と改良を行う。各レイノルズ数における摩擦抵抗を最小化できる速度勾配を検討し、摩擦抵抗を最小化できる速度勾配を実現できるよう表面制御装置を改良し、小型高速流路において流場制御試験を行う。更に表面制御装置により発生させる音響流を周期的に変化させて乱流渦に与える影響を調査し、乱流渦の抑制と摩擦抵抗低減を実現するパラメータを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音響流の放射角を推定する手法が、文献調査によるものであったため、一度に多くの試作デバイスを製作するのをやめて、推定手法の見直し後に、試作デバイスを追加で製作する方針に変更したために次年度使用額が発生した。
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