物体表面に弾性表面波を発生させ、音響流を放射させることで、境界層内の流場を制御することで流体抵抗低減を図るデバイスの研究を行った。 弾性表面波により放射される音響流は、弾性表面波を発生させる物体の縦波伝搬速度と接する流体の音速の関係により、放射角が決まり、流体の音速に対して、デバイス側の縦波伝搬速度がやや速いと、デバイス壁面とほぼ接する角度で音響流を放射することができる。このような音響流を放射できれば、境界層内の流れを乱すことなく効率的に流場制御することができる。 一方、弾性表面波を発生させるのに一般的に使用される圧電材料は、水の音速と比べて、縦波伝搬速度が大幅に速く、そのまま用いると、音響流の放射角は、デバイスの壁面の垂直方向成分の方が接線方向成分のほうが大きくなり、そのままでは使用するのが難しい。 そこで圧電材料の縦波伝搬速度を制御するため、圧電材料を、発生させる弾性表面波の波長以下に薄膜化し、金属、樹脂材料と貼り合わせる手法を採用し、材料の組み合わせ、材料の厚み、回路の形状により、縦波伝搬速度がどのように変化するか研究した。 研究の結果、PVDF(圧電材料)+ステンレス、PVDF+アルミ、ニオブ酸リチウム(圧電材料)+ポリスチレンの組み合わせで縦波伝搬速度変化させることに成功した。また、圧電材料の厚み、回路の形状から決まる弾性表面波の波長、圧電材料と基板材料の縦波伝搬速度をパラメータとして、複合化した圧電材料の縦波伝搬速度を推定する手法を構築し、流場制御デバイスの設計ができるようにした。
|