研究課題/領域番号 |
18K18917
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀田 紀文 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00323478)
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研究分担者 |
山口 弘誠 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90551383)
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 准教授 (80378918)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | フラッシュフラッド / UAV(無人航空機) / 地形測量 / 気象観測 / 危険雨量 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,大谷崩での土石流観測とUAV(無人航空機)による地形測量を実施した.調査中にUAVの墜落やカメラの破損などがあり,一部データの欠測などもあったが,取得データによって作成した地形モデルは昨年度と同様に高精度であることが確認出来た.土石流の観測結果に基づく論文も出版された. 過去データも含めて,微地形条件と土石流規模の関係を詳細に検討したところ,土石流の発生条件に関しては降雨の閾値が明確に存在するものの,規模については降雨規模・特性との相関は見られなかった.土石流災害の予測には降雨観測だけでは不十分で,UAVによって可能になる,高頻度・高精度の測量による微地形条件のモニタリングの有効性が示された.この成果についても,現在投稿準備中である. 仕様変更により昨年度購入を断念した近赤外カメラについては,本年度に,他機関から近赤外カメラを借用することでテストを実施した.テスト時の条件(降雨直後)が悪く,水分条件の空間変動については不明瞭であったが,近赤外カメラを使用した際の後処理(SfM:Structure from Motion)手順とその精度が確認できた.同等機の購入は,UAVの墜落・修理の影響で,本年度内の調査の実施が困難になったことなどから,次年度に見送った. また,UAV搭載可能な光学式の雨量センサーを用いて小型雨量計を複数作成し,従来型の雨量計との同時観測を開始した.雨滴観測などの実績もある東京大学千葉演習林に機器を設置したが,度重なる災害(台風15号,21号)で被害を受けると共に,林道の崩落などで現地への立ち入りが長期にわたって困難となった.年明けにようやく復旧作業を開始し,年度内に再度設置をしたが,その後のコロナ禍のため,データ取得状況などは未だに確認出来ていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の段階で本研究の1つの柱である「微地形条件がフラッシュフラッドの発生予測に大きく影響を及ぼす」という作業仮説の検証が順調に進み,論文として取りまとめる段階まで来たのは想定を上回る進捗状況である.また,それを実現するための,高頻度・高精度の地形測量に関しても,UAVに搭載したGNSS(Global Navigation Satellite System)によるRTK(Real Time Kinetic)測量を同時に行うことで可能になるという道筋を示すことができた.一方で,併せて実施することが有効と考えられる流域の水分状況の監視に,同じくUAVに搭載可能な近赤外カメラを用いることや,UAVから投下可能な小型の雨量計の開発などに関しては,UAVの墜落や,災害による機器の故障などのアクシデントのために,次年度に持ち越しとなっており,総合的には当初の予定に近い進捗状況となっている.
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今後の研究の推進方策 |
UAVを用いた流域監視について引き続き検討を行う.近赤外カメラに加えて,熱赤外カメラを用いて流域内の水分条件の分布の検出を試みる.また,光学式の雨量計に関する精度検証も引き続き実施する.そのうえで,研究の取りまとめとして,フラッシュフラッドの予測手法に関する提案を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
流域の土壌水分の空間分布を把握するためにUAVに搭載可能な近赤外カメラを備品として計上していたが,UAVの墜落・故障に伴い,調査での使用目処が立たなくなったため,近赤外カメラの購入を次年度に見送った.
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