研究課題/領域番号 |
18K18918
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松元 高峰 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 特任准教授 (20374209)
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研究分担者 |
河島 克久 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (40377205)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 全層雪崩 / グライド / 積雪の性状変化 / 積雪底部 / 危険度指標 |
研究実績の概要 |
本研究は、全層雪崩が発生する斜面上の積雪底部において、積雪の密度・含水率、積雪中の物体にかかる応力、積雪底面から流出する水量と水質の変化を計測する手法を開発することで、グライドによって雪崩発生直前に変形・破壊に至る積雪層の性状変化を捉え、それらの変化と「雪崩発生のタイミング」「グライド速度の変化」との関係を解明することで、全層雪崩発生の危険度指標を提案することを目的とする。 本年度は、2018/19冬季に計測したデータの解析を行なうとともに、計測機器設置用ポールの開発を進め、2019/20冬季に新潟県魚沼市大白川における観測斜面で積雪の性状変化に関する計測を実施した。 2018/19冬季に得られた積雪底部における誘電式含水率計の計測値は、積雪の密度・含水率の変化に対応すると考えられる変化パターンを示すことが分かった。また、観測斜面上の灌木に設置したひずみゲージの計測結果からは、幹が埋雪する初冬にひずみが大きく増加して、その後はほとんど変化しない樹種と、積雪期間を通じてひずみが増加していく樹種とがあることが分かった。後者の樹種では、積雪のグライド速度が大きくなる時期にひずみが不安定化(減少)するという傾向が見られた。 2019/20冬季には、前年と同様に、誘電式含水率計を用いた積雪の密度・含水率推定手法の確立と、ひずみゲージを用いた積雪中の物体にかかる応力の計測を進めるとともに、水位計による観測斜面下方における水位変化の計測を行なった。このほかに、複数のグライドメーターによる積雪グライドの自動連続計測、インターバルカメラ・ウェブカメラ・UAVによる雪面形状の変化の監視なども実施した。一方、積雪底面に倒伏する構造を持つ計測機器設置用ポールの開発については、誘電率式含水率計、温度計、傾斜センサーを取り付けた可倒式スプリングポール2基を製作し、観測斜面に設置してテストを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019/20冬季は、過去100年以上みられなかったほどの著しい暖冬少雪となってしまい、平年ならば3m前後の積雪を生じる調査地の大白川でも、斜面にほとんど雪のない期間が多く、最大積雪深も約1mに過ぎなかった。そのため、全層雪崩はおろか積雪のグライドも全く発生せず、グライドの進行から雪崩発生直前にいたる過程での積雪層の性状変化を大白川の観測斜面で計測することは不可能な状況となった。そこで2月に入ってから、標高が高く積雪量も多い福島県福島市土湯峠において、積雪底部における誘電式含水率計を用いた計測などを開始したが、その後、新型コロナウイルス感染症が各地で拡大したために、調査を途中で打ち切らざるを得なくなってしまった。そのため、計測機器設置用ポールのテストなどについては予定通りに進捗しているものの、積雪底部における積雪層の性状変化の計測データ取得については、遅れが生じている状態である。 なお、昨年度までに取得したデータの解析結果については、その一部を学会誌における解説などの形で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究計画通りに「破断面周辺の積雪底部における積雪層の性状変化の計測とその解析」「雪面形状、グライド速度、融雪量、積雪底面流出量のモニタリング」「積雪底面に倒伏する構造を持つ計測機器設置用ポールの開発」それぞれを進め、これまでに得られたデータと合わせて解析を進めることで研究成果を随時発表していく。このうち現地での計測に関しては、過去2冬季に計測を実施した全層雪崩の発生しやすい斜面に加えて、積雪のグライドは起こるものの全層雪崩の発生には至ることのない、より安全で短い斜面においても計測を実施し、同時にグライド進行中の斜面で積雪や樹木、地表面状態の直接観察・計測を行なって、データの比較解析を行なう。また、計測機器設置用ポールに関しては、計測データをリアルタイムモニターできる機構を追加して各観測斜面における計測に用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入予定だった計測機器等に関して、修理の可能性を考慮していたもののその必要がなかった場合、また計画時に想定したものよりも安価で適当なものが見つかった場合などがあり、物品費の支出が計画より小さくなったため。また、旅費、人件費・謝金については、調査地が本研究と同一の場合に、本研究以外の経費で支出できた場合があったため。 次年度の物品費としては、当初から購入計画のあったものに加えて、設置する数を計画より増やす機器などの購入に支出するものとする。旅費、人件費・謝金、その他の経費については、基本的に当初からの研究計画のとおりの支出を考えている。
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