大都市圏における通勤ラッシュや帰省ラッシュなど交通網の混雑が社会に与える影響は非常に大きく,これらを緩和することは重要な課題である.現在,スマートフォンを利用した乗換案内や経路案内などのサービスにより,目的地までの経路に加えて道路や路線の混雑状況まで知ることができるようになったが,交通網の混雑を解消することは未だに困難である.多くの乗換案内や経路案内のサービスは,個別の利用者に対して最短経路問題を解いた結果を用いて経路を推薦するため,しばしば同一の道路や路線に利用者が集中して混雑が引き起こされることが知られている.このように,交通網では個別の利用者に対して経路を最適化しても混雑を緩和できるわけではなく,全ての利用者に対して同時に経路を最適化する必要がある.本研究では,大都市圏の鉄道網において数百万人の利用者の経路を同時に求める全体最適化を実現する経路推薦アルゴリズムを開発し,通勤ラッシュ時における混雑のピークを最小化する旅客の乗車経路を求めた. 最近では,スマートフォンと地理情報システムの普及にともない車両と旅客をマッチングするサービスが現れるようになった.特に,Uberに代表される一般乗用車の運転手と相乗りを希望する利用者をマッチングするライドシェアはそのサービスを急速に拡大している.しかし,多くの利用者がこれらの利便性の高いサービスを手軽に利用できるようになったにも関わらず,地域や時刻によりサービスの供給が著しく不足して利用者の待ち時間が非常に長くなる,逆にサービスの需要が著しく不足して車両の待ち時間や移動距離が非常に長くなることが少なくない.本研究では,大都市圏のタクシー配車サービスにおいて数千台のタクシーの一日の配車と経路を同時に求める全体最適化を実現する配車計画アルゴリズムを開発し,サービスの不均衡を解消するタクシーの移動経路を求めた.
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