研究課題/領域番号 |
18K18922
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
笹 健児 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (10360330)
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研究分担者 |
川原 秀夫 大島商船高等専門学校, 商船学科, 教授 (80300622)
箕浦 宗彦 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30294044)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 汗濡れ / コンテナ / 気象海象 / 実海域 / 貨物損傷 / 最適運航 / 海上輸送 |
研究実績の概要 |
当該年度は研究の2年目としてコンテナ船での実船実験について、1年目に設計した実験システムをアジア~欧州航路のコンテナ船(20,000TEU)に搭載、2019年5月より実海域での実験を開始し現在も継続している。実船実験では船橋における気温、湿度、日射量をはじめ、本船位置、速力、海水温度、風向風速、船体運動等を時々刻々に観測、データを蓄積している。2019年12月にデータ回収し、分析を進めている。 (1) 2019年5月~12月に至るアジア~欧州間の航海(3往復)における実海域データが計測できた。外気温については春季はアジアと亜熱帯(シンガポール~インド洋~中東)にて10℃近くの温度差、亜熱帯と欧州で15℃近くの温度が生じている。夏季はアジアと亜熱帯の気温差は小さくなるが、欧州との気温差は15℃近く存在する。秋季から冬季にかけてアジアと亜熱帯の気温差が再び10~15℃近くとなり、欧州の気温低下により気温差が20℃を超える。亜熱帯は1年を通じて気温の差が小さく、かつ日変化も大きくない。緯度が高くなるにつれて日変化が大きくなることがわかった。 (2) 湿度で比較するとどの海域も大きな差が生じているようには見えないが、水蒸気圧として比較するとアジア>亜熱帯>欧州の関係が明確に見て取れる。さらに露点温度の変化も計算し、コンテナ汗濡れの可能性を検証した。アジアから欧州への航海ではアジアでの温度(コンテナ内の気温)に対し、地中海以降で外気温が大きく下がる影響にて露点温度がコンテナ内気温を下回り、汗濡れとなりうる。欧州からアジアへの輸送では寒冷地から熱帯地への移動に伴い、欧州(積載地)の露点温度を外気温が上回るため、外気が凝結、汗濡れに至る可能性がある。両者の確率を計算したところ50~70%発生しうることがわかった。 最終年度はこれらのデータをさらに蓄積・分析を進め、メカニズムを明らかとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた実船実験が順調に進められており、貴重なデータも一部、持ち帰り、分析を進めることができている。現在、持ち帰ったデータを鋭意、整理・分析を進めており、これまでの研究にて明らかとされていなかった空間変化による温湿度、日射を始めとする気象変化の関係を明らかとしようとしている。研究当初に不明であった、空間変化による温湿度や日射量の変化がアジア~欧州航路の場合は非常に大きいことが明らかとでき、コンテナの温度管理の難しさも把握できた。パラメーター間の関係など未解明な点も多くあるが、全体的に見て研究は概ね順調に進展しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年5月より実施している実船実験にて貴重なデータが得られていることは既に述べたが、全季節および年による違いもさらに把握したいため、このまましばらく継続し、データの蓄積を図る。また気温および日射量はコンテナの積載位置によって大きく違うことが先行研究でも指摘されており、この点について、センサーを様々なコンテナ位置に10点設置し、その違いを把握する。また陸上でのコンテナ熱伝導の実験も実施されており、コンテナ内外の温湿度の関係をもとにアジア~欧州にコンテナ輸送された場合のコンテナ内部への影響をより詳細に推定、評価を行う(汗濡れ確率の算出)。以上から汗濡れ確率を最小とするような新たな最適運航モデルの開発により当初の目的を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた実船実験における追加実験としてセンサー購入を予定していたが、船会社との都合により次年度に繰り越す必要があったため、次年度使用額が生じている。この分は令和2年度に使用する。
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