火山噴火により噴出し広範囲に拡散された浮遊火山灰は、日常生活や経済活動に大きな影響を及ぼす。この影響を最小限に抑えるためには、迅速で正確な浮遊火山灰の拡散予測が有効であるが、その実現のためには定量的な浮遊火山灰の初期情報が必要である。しかし現状の観測は地上での降灰サンプリングやディストロメータを用いた計測等に手段が限られている。本研究では、地上でのその場観測の代わりにパルスレーザを用いることにより、浮遊火山灰の粒径情報と密度情報をリアルタイムで遠隔から測定する装置の開発を目的としている。得られた情報は衛星やレーダ観測等噴煙拡散情報と組み合わせることによって、正確な拡散予報への利用が期待できる。 当該年度は、前年度に行ったシミュレーション並びに室内実験の結果を踏まえて、パルスファイバーレーザを光源としたポータブルな浮遊火山灰のレーザ計測装置の製作及び信号処理システムの開発を行った。開発した装置を用いて、初めに大学キャンパス内において雨滴の検出実験を行い、雨滴粒子から離散的なスパイク信号が得られることを確認した。この成果を踏まえ、発電機並びにポータブルバッテリーを用いてフィールドワーク計測のための周辺環境整備を行い、鹿児島県桜島において、実際の火山の噴煙並びに背景環境のレーザ計測を行った。火口から2kmほど離れた場所から噴火時に噴煙粒子からの信号を計測する事に成功した。今後粒径情報等の詳細な解析を引き続き行う予定である。
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