研究課題
無容器法で合成した高充填密度ガラス系において,ガラスでは決して発現しないとされている強磁性を示すガラス,「透明ガラス磁石」を創り出すことを目的として研究を進めた.これまでにR2O3-B2O3二元系(Rは希土類元素)で,無容器法を用いることで従来のB2O3リッチ組成だけでなく,R2O3リッチ組成でのガラス化を見いだした.それらの物性や構造について各種実験から評価し,物性と構造,さらにはガラス形成能との相関を詳細に議論することができた.R2O3リッチガラスでは,Rの種類によらず赤外域に新たな透過域が出現していた.ラマン散乱やFT-IRによって,これらのガラス中のBの局所構造が,孤立した平面BO3のみになっていることがわかった.そしてこのことが振動成分の種類を抑制し,赤外域でのフォノンの離散化を促した結果,赤外域での新たな透過域の出現に繋がったことを明らかにした.さらに放射光XRDからは,R2O3リッチガラスの希土類周囲の構造が,数あるRBO3結晶構造のなかの一つ,高温NdBO3型とほぼ類似していることを確認した.ガラス形成メカニズムが,競合する結晶の構造と強い相関があること,すなわち最密充填構造からのわずかなずれによるものと明確に提案することができた.このように結晶に近い原子配列をもつガラスに対して,ダイヤモンドアンビルセルを利用して高圧処理を行ったところ,約4GPaまでは明確な構造相転移はなかったが,B-O振動ピークのシフトが見られた.また,50Dy2O3-50B2O3などいくつかの磁性をもつ試料について磁気光学効果を測定したところ,一般的な磁気光学ガラスを遙かに凌駕する大きなベルデ定数が得られた.ただし強磁性は発現しておらず,希土類のf電子に由来する常磁性のみであった.今後はさらなる高温高圧処理によってガラス構造の制御を行う必要がある.
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