研究実績の概要 |
省エネパワー半導体材料の代表格であるSiCの数多ある多形のうち、3C-SiCは高いチャネル移動度を実現できるため、低損失の中耐圧MOSFETへの応用が期待される。しかし、高品質化が有望視される溶液成長では、デバイスキラー欠陥のDPB(Double positioning boundary)が容易に形成される。そこで、Si-C対6層から成る周期的なステップを種結晶の表層に形成させ、DPB発生を抑制するアイディアを考案した。6H-SiCに内在する貫通らせん転位を利用した周期ステップ構造を作製し、新しい界面制御法を確立すべく研究を進めた。 2020年度は、昨年度に構築した微分干渉顕微鏡の分解能の評価を実施した。微分干渉顕微鏡とAFMでの観察結果を比較した結果、微分干渉顕微鏡が20mm以上の長作動距離を有するにも関わらず、Si-C対2層から成る僅か0.5nmの高さのステップでも可視化できることが明らかになった。一方、高温でのSiCの溶液成長過程における観察においては、面内におけるステップ間隔を十分に確保した成長に至らなかったため、分解能の評価には至らなかった。また、本研究の遂行においては、高温での結晶成長時に多形を識別し、3C-SiCの成長挙動を調査することが重要であるため、高温での各多形の光吸収波長の違いにより判別すべく、バンドギャップの温度依存性を測定した。その結果、3C-, 4H-, 6H-SiCのバンドギャップを最高1600℃までの温度範囲で取得することができた。さらに、高温でのその場観察を実施した結果、バンドギャップの温度依存性より観察視野内での多形の識別が可能であることを明らかにした。
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