高信頼性耐熱材料として期待されている炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素基(SiCf/SiC)複合材料では、繊維表面に最適な界面層を形成し、最適な界面制御することが高性能な複合材料の実現の鍵となる。本研究では、従来の炭素や窒化ホウ素に代わる界面層物質として、優れた耐食性、耐熱性、耐熱衝撃性及び機械加工性等の特性を有するTi3SiC2やAl4SiC4の三元系ナノ層状炭化物に注目し、本研究グループが開発・提案した電気泳動堆積(EPD)法によるセラミックス基複合材料の新規耐環境性界面層の開発を目的とする。2020年度は、Ti3SiC2及びAl4SiC4について、EPD法による界面層被覆プロセスの最適化、三元系ナノ層状炭化物を界面層とするSiCf/SiC複合材料の作製とその機械的特性、及び高温酸化雰囲気での耐酸化性を評価した。まず、EPD法による界面層被覆プロセスについて、三元系ナノ層状炭化物懸濁液の調製及びEPD条件の最適化を図ることで、SiC繊維表面に厚さ60-350nmの均一な界面層の形成が可能であることを明らかにした。三元系ナノ層状炭化物を界面層とした一次元SiCf/SiC複合材料を作製し、室温での曲げ試験を行ったところ、擬塑性破壊挙動を示したことから、Ti3SiC2及びAl4SiC4はSiCf/SiC複合材料の界面層として有効であることを明らかにした。また、大気炉を用いた800℃-1200℃での酸化処理後に室温での曲げ試験を行ったところ、800℃での酸化では擬塑性的破壊挙動を維持したが、1000℃以上の酸化で脆性的な破壊挙動を示した。TG-DTA、SEM及びEDXの結果から、酸化によりTi3SiC2界面層表面に生成した酸化膜が酸化に対する保護膜として機能する可能性が示唆され、耐酸化性の更なる向上のためにはTi3SiC2界面層の厚さの増加が必要であると結論づけた。
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