研究実績の概要 |
本研究はナノメートルでの「切断」の科学として,材料内に刃先が進入し分離するという現象に焦点を当てて,様々な分子動力学(MD)シミュレーションを行い,ワーク(被削材)の種類や結晶方位,刃先形状,刃先とワークの相互作用,温度など,様々な要因が切断・分離現象(切断面の荒れや離れた場所でのクラック発生など)に及ぼす影響を検討する. 刃を鋭利にしてワークに侵入しやすくすることは,応力集中を極限まで高めて塑性変形を発生しやすくすることである.本年度は原子間ポテンシャルによる切断シミュレーションではなく,より精度の高い第一原理計算によって塑性変形の開始条件を種々の金属材料について評価すべく,格子不安定性に基づく弾性限界ひずみの評価を行った.8種類のfcc金属,4種類のbcc, hcp金属について第一原理計算で一軸引張状態での弾性剛性係数Bij=Δσi/Δεjを評価し,弾性剛性係数マトリクスの固有値(固有方程式BijΔεj=ηΔεiの解)が負になる弾性限界ひずみと,対応する固有ベクトルの変化から,切断シミュレーションで用いたEAMポテンシャルとの対応を議論した.また,これらの金属について(001)表面エネルギーを計算し,他の第一原理計算や実験データと比較した. また,切断時に生じる異種材料界面の割れを想定して,EAMポテンシャルによる異種材料界面のはく離シミュレーションを行うとともに,第一原理計算で上記のfcc, bcc, hcp16種類の120通りの組み合わせで界面エネルギーを評価した.
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