研究課題/領域番号 |
18K18946
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉村 博之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293656)
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研究分担者 |
一井 崇 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30447908)
宇都宮 徹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70734979)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化グラフェン / 光還元 / 真空紫外光 / 重水素光源 |
研究実績の概要 |
電子デバイス応用に向けたグラフェン系材料の大量生産方法として,酸化グラフェン(graphene oxide,GO)を再還元させる手法が盛んに研究されている.われわれはこれまで、172 nmにピーク波長をもつXe2エキシマランプを用いた真空紫外(vacuum ultraviolet,VUV)光照射 (以下VUV_Xe) によるGOの還元,構造回復および電気伝導特性向上について報告してきた.しかしVUV_Xe光によって還元したGOには未だ構造欠陥が残存しており,その電気伝導特性は熱や化学還元したGOに比べ2~3桁低いという問題があった.本課題ではGOのさらなる構造修復のために,ピーク波長を126 nmと160 nmにもつ重水素ランプ (VUV_D2) を用いた光還元を行った. 本年度は,VUV_D2光を用いたGOの還元について,調査を行なった.X線光電子分光測定 (XPS) およびラマン分光測定の結果より,VUV_Xe光を用いた還元よりもGOを還元,構造修復していることが示された.また,原子間力顕微鏡 (AFM) による表面構造分析の結果から,VUV_D2によってGOが還元されるだけではなくSiO2が改質されることが判明した.さらに,電気特性評価の結果,VUV_Xe光還元したGOと比べ,VUV_D2光還元したGOの方が電気伝導率は2桁ほど高い結果となった.この結果は,VUV_D2光による光還元の大きな可能性を示すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずはGOの光還元に対し,XPS,ラマン分光,AFM,および電気測定などを通してVUV_D2光の有効性を十分に示すことができた。これらの結果は今後の研究につながるものであり,研究は順調に推移していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
VUV_D2光源は126 nmと160 nmの二つのピーク波長をもつ.そこでまず,どちらの波長の光がGOの還元に有効に働いているのかを明らかにする.また,高分解能STMやAFMなどを用いることで,VUV_D2光還元されたGOの構造や局所物性を明らかにする.加えて,SiO2以外の基板についても実験を行うことで,GO-基板間の光化学反応についても詳細に調査を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主に現有装置により研究を遂行できたため、支出額が予定よりも少なくなった。次年度は重水素ランプ光源やキセノンランプ光源などの購入が必要となるため、予算をこれらに当てる計画である。
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