研究課題/領域番号 |
18K18949
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 弘行 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60294021)
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研究分担者 |
趙 研 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00633661)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ハイエントロピー合金 / カクテル効果 / 形状記憶合金 / 超弾性 |
研究実績の概要 |
平成30年度には、bcc構造の高濃度固溶体を形成するTiZrNbHfTa系ハイエントロピー合金の単結晶を作製するとともに、その変形挙動についてpreliminaryな実験を行った。単結晶化については、光学式浮遊帯域溶融炉ならびに高周波誘導加熱炉の2種類の手法でチャレンジし、粗大粒を得ることに成功した。したがって、この粗大粒から圧縮試験に必要な試験片を切り出した。なお、凝固ままの状態では鋳造欠陥が多いため、適切な条件で熱処理を施すことで、鋳造欠陥を消滅させた。その後、様々な温度で熱処理を施したところ、TiZrNbHfTa合金はbcc相の2相分離、α相の析出等、多様な相変態を生じることが確認された。そこで、高温で溶体化した試料を室温~800℃の温度範囲で変形したところ、とりわけ600℃で強度の著しい上昇が認められた。なお、多結晶でも同様に、600℃にて高い高温強度が得られた。これらは、TiZrNbHfTa合金特有の相変態挙動と密接に関係していることが示唆された。さらに、すべり線を解析した結果、同合金の変形挙動はbcc金属と同様に、<111>らせん転位の運動に支配されていることが示唆された。 さらに、相変態挙動を詳しく調査するため、TiZrHfとNbTaの比を変えた合金を複数作製した。その結果、NbTaの少ない合金では、前述のbcc相2相分離やα相の析出といったチタン合金と同様の相変態挙動が認められたが、現時点で、形状記憶・超弾性効果につながる相変態現象は認められていない。実際、室温で引張試験を行っても形状記憶・超弾性効果は発現しなかった。さらに、強度と延性の組成依存性について調査を行ったところ、強度、延性のバランスが最も取れているのは、TiZrNbHfTaの各元素が等量配合された場合であった。一方で、熱処理によって前述の通りの析出が生じた場合は、粒界にて脆性的に破壊が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粗大粒ではあるものの単結晶作製に成功し、その力学特性の評価に成功している。また、合金元素を非等量配合した場合の組織評価も実施している。
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今後の研究の推進方策 |
TiZrNbHfTa系合金単結晶について、静的・動的観察法を駆使して変形挙動の解明を引き続き実施する。さらに、bccハイエントロピー合金における形状記憶効果・超弾性を発現させるために、非等量配合組成の合金を複数作製する。場合によっては、MoやVの添加も実施する。
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