研究課題/領域番号 |
18K18951
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
荒河 一渡 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (30294367)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 転位 / 材料強化 / 鉄鋼 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究は、「高エネルギー転位」による、鉄鋼材料の新たな強化原理の開拓を目的とする。一般に、金属材料の強度と延性はトレードオフの関係にある。これに対して、この新たな原理では、延性を低下させずに強度を顕著に増大させることができると期待される。金属の塑性変形は、しばしば線状の結晶格子欠陥である転位の生成と移動によって担われる。したがって転位の挙動は金属のマクロな機械的性質を支配する。たとえば金属を強化するには、転位を動きにくくすればよい。フェライト系鉄鋼材料等のアルファ鉄系材料の塑性変形は、転位芯の原子変位に対応する「バーガース・ベクトル」が最小の 1/2<111> である転位によって担われることがこれまでの常識であった。これに対し本研究では、「高エネルギー転位」としてその存在が無視されてきた、バーガース・ベクトルのより大きな <100> 転位に着目する。 本年度は、純鉄を対象として、<100> 転位を導入した試料の透過電子顕微鏡内引張実験に着手した。また、高エネルギー電子照射下における転位間相互作用によってすべり移動する <100> 転位同士が反応した場合に、どのような反応が起こるかを調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、純鉄を対象として、<100> 転位を導入した試料の透過電子顕微鏡内引張実験に着手した。現在、既存の実験装置の問題を克服するための新たなジグの製作を進めているところである。 また、高エネルギー電子照射下における転位間相互作用によってすべり移動する <100> 転位同士が反応した場合に、どのような反応が起こるかを調べた。その結果、<100> 転位から 1/2<111> 転位へ戻る反応は起こりにくいと結論した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、<100> 転位を導入した試料の透過電子顕微鏡内引張実験を進め、変形下での <100> 転位の挙動についての知見を得るとともに、<100> 転位を主な転位源として優先的に導入するための条件を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも実験が順調に進み、計上していた額よりも物品費が少なく済んだため。 今年度は既に2件の国際会議での招待講演を受諾している。繰越額は、旅費の補助に充てる予定である。
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