研究実績の概要 |
MRI診断において生体内に金属製医療器具が留置されている場合,新たな磁場が発生し周辺の画像にアーチファクトと呼ばれる欠損・不明瞭部が生じる.本研究の目的は低磁化率・反磁性元素で構成されるHf基,AgおよびAu基生体用形状記憶・超弾性合金の開発を行うことである. 1.Hf基合金の創製 純Hfのβ(体心立方晶) ⇔ α(最密六方晶) 同素変態点は1743 ℃であるため,Ti, Nb,Zrなどを添加してβ相の安定化を図り,ω相生成の抑制やβ⇔α”(直方晶)マルテンサイト変態温度の制御を目的として,合金元素の総量を50原子%未満とする種々のHf-Nb-Sn, Hf-Ti-Nb-Sn, Hf-Zr-Ti-Nb-Sn合金を溶製した.しかしながら,室温でβ単相を得ることができなかった. 2.Ag-AlおよびAu-Al合金の溶製 Ag-23~27Al合金とAu-33Al合金を溶製し,形状記憶効果,超弾性の素過程である熱弾性マルテンサイト(以下M)変態の発現の有無と変態点の測定を行った.Ag-Al合金では室温以下でM変態と形状記憶効果が確認されたが,超弾性による形状回復は不完全であった.一方,Au-Al合金のM変態温度は450 ℃以上であり,形状記憶あるいは超弾性材料としての生体への適用は難しいと考えられた.そこで,Ag-25Alを基本組成とするAg-Au-25Al合金とAu-33Alを基本組成とするAu-Ag-33Al合金を溶製したが,前者ではM変態が検出できず,後者ではAgの置換によっても変態点の低下させることができなかった.Ag-Al合金について印加磁場3テスラでMRI撮像を行った.試料形状は直径3 mm, 高さ8 mmの円柱状とし,T1, T2, T2*強調画像の三種のシーケンスでスキャンした結果,いずれにおいてもアーチファクトの出現はほとんど認められなかった.
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