研究課題/領域番号 |
18K18957
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊田 進太郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70404324)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ナノシート / ヒドリド / プロトン / 粒界・表面 |
研究実績の概要 |
本研究では、二次元材料の表面もしくは粒界を利用したヒドリド伝導体の探索を目的としている。ヒドリドは水素分子の還元によって生成し、その酸化還元電位は、水素標準電極に対して-2.25Vと大きく卑な電位を持つ。そのため、もし単独のヒドリドと酸素で燃料電池が構築できれば、通常のH2/O2の燃料電池の起電力を大きく上回るの起電力が得られる計算になる。このようなデバイスを実現するためには、ヒドリドイオン伝導体が必要であり、これまでにLa-Li系の酸水素化物であるLa2LiHO3のLaをSrで置き換えたLa-Sr-Li-H-O系の材料がヒドリド伝導体として研究が進められてきた。しかしながら、依然としてヒドリド伝導を示す材料は少ない。そこで本研究では新しいヒドリド伝導体の設計方針として、表面もしくは粒界に注目して研究を進めた。具体的な進捗としては、貴金属ドープ チタニアナノシートを作成し、ナノシート表面を介したヒドリド伝導が観察されるか調査した。ナノシートを水素雰囲気で処理すると、高い温度で処理をしてしまうと、貴金属がメタルとして析出したが、室温では貴金属の析出は認められず、その貴金属ドープサイトに水素分子がヘテロ解離吸着してヒドリド種を形成して吸着することを確認した。この貴金属ドープチタニアを主材料に用いてペレットを作成し、窒素、水素、重水素中で伝導度を測定すると、水素、重水素中で伝導率が大きく上昇し、かつ水素と重水素雰囲気で伝導度の違いを確認できた。現段階では、伝導イオン種はプロトンとヒドリドの可能性があり、今後は、イオン種の同定を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究成果で、ヒドリド伝導の可能性があるナノシート材料を開発することに成功したため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.初年度に開発した材料を用いて、伝導種がヒドリド種であるかの同定を精密に行う。 2.金属もしくは酸化物ナノシートなど、様々なナノシートを平滑な基板上に吸着させ、ナノシートに電極を形成し、H2とD2中で伝導度を測定し、H2中とD2中の伝導度を比較することでヒドリド伝導体の探索を行う予定である。また、本研究で対象とするナノシートとして、Pt、Rh、In、Pd、Ti、Ni等の金属ナノシートと、貴金属がドープされたNiO, TiO2, Nb2O5ナノシートを検討する予定である。 3.初年度に開発したヒドリド伝導性の可能性がある材料を中心に、DFT計算、NMR、FT-IR分析を用いてヒドリドの存在を十分示す実験データを取得する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究で使用する高純度の重水素ガスが価格高騰により、予定した予算を超えてしまい、その影響を受けて、当初購入予定であった充放電装置が購入できなくなったため、当該助成金が生じた。本年度は、当該助成金を含めて、本研究の遂行に必要な評価装置を自作する予定である。
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