昨年度までに概念実証を達成した収縮性の高分子材料を支持体に用いることでその内部に作製した金属微細構造を収縮させる方法につき、体積相転移を示すpNIPAMハイドロゲル内部における加工寸法のレーザーパラメータ依存性を調べるとともに、作製した構造の光学特性を調べ、金属ナノ粒子固有の光吸収特性を示すことを実験実証した。また、金属微細構造の収縮は可逆的であり、光刺激により収縮と膨潤を繰り返すことが可能であることを示した。金属微細構造の配置によって支持体となるハイドロゲルの体積相転移を局所的に誘起することが可能であり、異なる金属を用いることで波長選択的アクチュエーションが可能であることを示した。これは研究開始当初は想定していなかった成果のひとつである。以上の内容を原著論文として公刊するとともに、金属微細構造の収縮を活用した研究を国内会議および国際会議にて発表した。並行して、構造作製における熱効果を調べることを目的として、作製した金属微細構造の電子顕微鏡観察を行った。ウェット SEM カプセルを用いて含水試料の表面を観察可能したところ、カバーガラス表面に滴下した液体中における多光子還元の場合と比較して、ハイドロゲル内部に作製した金属微細構造では金属ナノ粒子の結晶成長が小さく、粒子が散布しやすいことが明らかとなった。これは、SEM像において観察された5マイクロメートル以下の寸法の空間を持つ網目構造、すなわちハイドロゲルマトリクスが関係していると考えられる。作製条件の選定により、線幅 2マイクロメートル以下の連続した線状の金属微細構造が作製できることを明らかにした。多光子還元を誘起する際のフェムト秒レーザーパルスによりハイドロゲルマトリクスが切断されるとともに、高い繰り返し周波数のレーザーパルスを用いることで生じる熱蓄積効果によって一部ではあるが熱溶融が生じたと考えられる。
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