研究課題/領域番号 |
18K18959
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
小林 亮太 東京都市大学, 工学部, 准教授 (30548136)
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研究分担者 |
宗像 文男 東京都市大学, 工学部, 教授 (50386356)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 窒化アルミニウム / ウィスカー / 発光挙動 |
研究実績の概要 |
今年度は窒化アルミニウム(AlN)針状単結晶の結晶成長挙動と発光特性に関する調査を進めるとともに、合成時の添加物の影響を中心に検討した。本科研費で分光蛍光光度計を導入することで、合成した単結晶の蛍光・励起スペクトルの計測が可能となり、発光メカニズムの解明に近づくことができた。 AlN針状単結晶の合成は、計画の通り常圧の窒素(N2)下で金属アルミニウム(Al)メルトを1700℃で熱処理することで行った。成長した単結晶は直径10 um以下のウィスカー状のものから、直径100 um以上の針状結晶が混じっていたため、これらをサイズや形状ごとに分けて評価を実施した。いずれのタイプの結晶も蛍光・励起スペクトルを計測すると250 nmの励起光で380 nm付近の蛍光が最も強く得られることが明らかとなった。また、蛍光強度の時間変化を計測したところ、最大で30 sec以上に達する残光を確認した。上記の結果より、AlN針状結晶の発光は成長時に導入された固溶酸素や転位が原因であると推定された。 AlN針状単結晶の合成時にマグネシウム(Mg)や鉄(Fe)を添加した場合、発光特性には大きな影響は見られなかったが、結晶成長挙動への影響が確認された。Mgを添加した場合、合成されるAlN針状単結晶の表面は平滑であり、収量も明らかに増加していた。Fe添加では合成されたAlN針状単結晶の先端に球状のFeが付着している部分が観察されたことから、ウィスカーの成長メカニズムとして知られるVLS機構による成長が起こっていることが示唆された。また、酸化マンガン(MnO)を添加した場合、発光波長が長波長側にシフトすることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AlN針状単結晶の合成については、基本となる結晶形態や発光特性の制御は現時点で達成できており、残り1年間で大型針状単結晶の育成に関する基礎的データは十分獲得できると考えられる。 一方で、窒化ケイ素(Si3N4)針状単結晶の合成については、高周波誘導加熱炉での合成の際に用いる黒鉛製の発熱体から炭素(C)が混入し、炭化ケイ素(SiC)が生成する問題が起こっていることから、アルミナ炉心管を用いた高温管状炉を使用して合成を実施していた。しかし、現有の炉の真空度が十分でなく酸素(O2)の残存により、合成中に原料のSiメルトの表面が酸化されて窒化が妨げられ、特性評価を行うのに十分な量のSi3N4が合成できなかった。現在、本科研費の経費を利用し、Siの酸化防止に十分なレベルのO2分圧(10 Pa以下)を達成することを目標として真空系の改良を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
AlN針状単結晶の合成時のN2分圧の制御は、ガス調整器によりN2ガスとArガスの流量をそれぞれ手動で調整して高周波誘導加熱炉に導入することで行っているが、今後は本科研費でマスフローコントローラーを導入し、より精密に分圧と合計流量を調整できるようにして合成実験を進める。また、大型針状単結晶の合成については、AlまたはAlN粉末を種となるAlN針状単結晶とともに投入して熱処理する方法で進める。既に、予備的検討で一度合成に使用したるつぼ中にAlを投入して熱処理すると、表面が極めて平滑なAlN針状単結晶が成長することを確認している。 Si3N4針状単結晶の合成は十分な収量が得られる段階となったところで、AlNと同様に結晶形態の制御を実施する。さらに、不純物添加による発光特性制御についても、アルミナ炉心管内に交換可能なSi3N4製のパイプを設置し、その中にるつぼを置くことで炉心管からのAlの混入を防ぎながら進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
[理由] 当初の計画よりも分光蛍光光度計が安価に導入できたことにより、備品費が余ることとなった。余った分については誘導加熱炉の改造・保守のための部品の購入等に充てたが、結果的には残金が生じた。
[使用計画] 研究の進展により消耗品の使用量が明らかに増加しており、今後大型単結晶の合成が本格化すると消耗品費が不足する可能性が高いため、そこに残金を充てる予定である。
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