今年度は、窒化アルミニウムウィスカー(AlNウィスカー)の合成時の不純物添加による結晶形態および発光特性の制御を進めるとともに、合成されたウィスカーの熱処理による高純度化や大型化を中心に検討した。 AlNウィスカーの合成は、昨年度と同様に常圧の窒素(N2)下で金属メルトを熱処理することで行った。これまで、マグネシウム(Mg)や鉄(Fe)の添加による結晶形態の制御を検討してきたが、蛍光特性の制御を狙い、新たにマンガン(Mn)成分の添加を試みた。MnはAlN粉末蛍光体における赤色発光中心として知られている。昨年度に予備的検討として酸化マンガン(MnO)を添加していたが、今年度は金属Mnの形での添加と蛍光スペクトル測定を実施した。Mnの添加は結晶形態には大きな影響を及ぼさなかったが、3 mol%程度の添加により紫外線下で強い橙色の蛍光を生じた。蛍光スペクトルでは、無添加の場合にも出現する380 nm付近のピークに加え、600 nm付近にもシャープなピークが観測された。一方、元素分析を行ってもAlNウィスカー中からMn成分は検出されなかったことから、添加されたMnが発光中心になっているというより、Mnの添加によってAlNウィスカーに元々含まれている不純物固溶酸素由来の欠陥や転位が変化し、蛍光特性が変化したと推定された。 合成されたAlNウィスカーをより高温で熱処理したところ、ウィスカーの表面にあった凹凸が消滅して平滑化し、結晶のエッジ部分が丸く変化した。また、蛍光強度については目視で分かるレベルでも低下していた。このことから、熱処理によりAlNウィスカー中の固溶酸素や転位が消滅・移動し、結晶品質が向上していることが示唆された。また、熱処理の際にAlを追加することで、細いAlNウィスカーが減少して、表面の平滑性が高く比較的系の大きなウィスカーが優先的に生じることも確認された。
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