研究課題/領域番号 |
18K18964
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
渡邊 宏臣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (30373385)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 薄膜 / 機械的強度 / バルジ試験 / 液中測定 / 安全性・信頼性評価 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画の第一目標である“測定環境の充実”について主に行った。具体的には、これまでの大気中に加え、液中での測定評価法について確立を行った。この遂行のため、研究計画立案時は、「液体用のフローコントローラーで溶液の圧力を精密に制御すると共に、液中での測定を可能とするチャンバーの設計を新たに行う」としていたが、より簡便な方法として、チャンバー内のみ液中に浸漬させ、空気圧で押し出すことで圧力のコントロールを試みた。これは、液体の圧縮率が非常に小さいため、液柱の高さを精密に計測することで、薄膜にかかる圧力を、初期の液圧と加圧した空気圧との和とすることができるためである。水による膨潤のほとんどないポリプロピレン薄膜(5ミクロン厚)を用いて試験を行ったところ、この手法によっても大気中のそれと同様のヤング率が水中で得られ、この結果は液中での測定法が確立できたことを示している。Liイオンバッテリーのセパレーターや分離透過膜などは液中で使用される場合が多いため、より実際と同じ環境での材料の安全性や信頼性評価を評価できることは、非常に重要である。 またもう一つの研究目標である「測定対象の充実」についても、一部について研究を進めた。バルジ試験の特徴が生かせるものとして、これまでは極めて薄い薄膜のみを測定対象としてきたが、このほかにも硬くて脆い材料や、極端に柔らかい材料にも本手法が有用であることが予測される。そこでこれらの代表例として、それぞれ金属酸化物薄膜及びポリジメチルシロキサン薄膜を用いてその実証を行った。金属酸化物薄膜は、従来の引張試験では型抜きしたサンプル端が起点となって破断するために試験結果に再現性が乏しかったが、本手法ではそれが回避され、再現性のある試験結果が得られた。またポリジメチルシロキサン薄膜を用いた試験では、ヤング率が数百kPaの柔らかい材料も測定できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標に掲げた2つの項目について、そのいずれも一定の成果を得たため、おおむね順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
薄膜と基板との間に働くキャピラリー力により薄膜をサンプルホルダーに保持した場合、付着のエネルギーが十分でなく、液中において膜は破断よりも先に基板から剥離される。この場合、ヤング率や内部応力などは求めることができるものの、極限引張強度の算出やクリープ解析は不可能である。そこで「液中での測定手法の確立」については、このような極めて薄いサンプルについて、新たな保持手法の構築を試みる。また、「測定対象の充実」では、一様二軸延伸という特徴を生かしゴム材料の物性解析を行うことで、バルジ試験のさらなる有用性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助員の雇用に必要となる人件費を積み上げていたが、研究補助員の雇用時期が当初よりも遅れたため。
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