研究課題/領域番号 |
18K18966
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡邉 賢 東北大学, 工学研究科, 教授 (40312607)
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研究分担者 |
SmithRichard Le 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60261583)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 物性可変性 / アミン / 二酸化炭素 / コバルト / ニッケル / 錯体 / 分離 / 水熱反応 |
研究実績の概要 |
金属単離濃縮に対して、二酸化炭素を溶解させることで瞬時に極性が変化し、溶解・析出を制御できる物性可変溶媒(もしくは分子)(Switchable Polarity Solvent/Molecule)に対し、昨年度、物性可変性分子としてアミノ酸を選択し、CoやNiとアミノ酸との錯体形成能を評価したところ、グリシンおよびアラニンによりCoおよびNiいずれも水溶液中で錯体を形成することが確認した。今年度は、この錯体形成反応を利用した廃棄リチウムイオン電池のリサイクルプロセスを想定し、錯体利用によるCoおよびNiの高効率浸出プロセスの可能性を探るべく、市販および実廃棄物に対し、水熱条件によるCoおよびNiの浸出反応をグリシンを用いて実施した。また、金属単離プロセスの簡略化への先駆けとして、三元系リチウムイオン電池正極材料それぞれの浸出反応の際を検討した。具体的には、正極材料としてLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4に対してグリシンを用いて水熱酸浸出を行ったところ、CoおよびNiの浸出率は反応温度および反応時間の増加にともない増加し、いずれも80 %以上の浸出率となったが、はMnの浸出率は反応温度および反応時間を増加させても大きな変化を確認できず10 %程度しか浸出しなかった。この理由としてグリシンと金属イオンの錯体形成が起因していることが示唆された。Irving-Williams則よりNi > Co > Mnの序列で同一の配位子と錯体形成しやすいことが知られており、浸出率の序列と一致した。この反応は実廃棄物にも当てはまり、CoおよびNiの水溶液中への浸出と、それと同時にMnとの分離が可能となる兆しが確認できた。アミノ酸は二酸化炭素と接触することでカーバーメートを形成し物性が変化することから、次年度は、その可変性と分離性能を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミン分子として環境に適合した分子であるアミノ酸、今年度は特にグリシンに特化した検討を行った。その結果、グリシンを用いた水熱反応によりリチウムイオン電池などで不可欠なコバルトおよびニッケルという希少金属を水溶液中に回収することができた、また廃棄リチウムイオン電池に適用し、その有用性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
グリシンによる錯体形成ならびに、その物性可変性が確認された後、連続化が可能なコスト優位なプロセス開発の基礎研究を推し進める。物性可変性分子であるアミノ酸を用い ることができることを見出したことから、CoやNiそれぞれを二酸化炭素の作用を利用して別種の錯体へと導き、それらの溶解度差を利用し、複数金属を同時・並列・高速・高効率で単離・濃縮する連続技術を目指した研究へと発展させる。具体的には、次年度には二酸化炭素との共存によりグリシン分子およびグリシンー金属錯体の物性が大幅に変化し、その溶解性が変化するかを確認する。
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