まず、50 μmと20 μmの微小電極をフォトリソグラフィーにより形成し、この上にPDMS製微小容器を置き、この上にさらに透明電極を形成したガラス基板を置き、観察用セルを作製した。ここに正負の表面電荷を有するポリスチレンビーズを導入して微小電極(金)に電位を印加し、それに伴うビーズの集団の運動を観察した。ここでは、まず、水の電気分解により水素イオン、水酸化物イオンの濃度勾配を形成し、挙動の変化を調べた。その結果、電位、ビーズの表面電荷の正負に応じて、ビーズ集団が電極に集合したり、ここから遠ざかる様子が確認された。この挙動は電解質を加えると抑制された。さらに、水の電気分解だけでなく、過酸化水素存在下でその酸化還元により反応物を生成し、ビーズの挙動の変化を調べた。過酸化水素を用いた場合には、より小さい印加電圧での運動が認められた。これらの結果は、ビーズの運動が、電極反応により生成されたイオンにより形成される局所電場の影響を受けたものであることが示唆される。同様の実験は、ニッケル等の金属を析出させた電極で金属を溶解させて金属イオンの濃度勾配を形成して行うことによっても試みたが、この場合は期待された結果は得られなかった。また、これをもとに、4つの電極を有するデバイスを作製した。微小電極に順次電位を印加することにより、ビーズ集団を電極間で順次移動させることに成功した。同様の集合・離散挙動は片面に酸化チタンを形成したヤヌス粒子に紫外線を照射した場合にも観察された。なお、これをもとに数μm程度の微小電極上にビーズを集め、自己組織化微小集合体を形成することも試みたが、電極系を微小にするにつれて局所電場の効果が及ぶ範囲が狭く、期待通りの結果を得ることについては、成功にまで至らなかった。
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