研究課題
本研究の最終年度に当たる2020年度には,生体外においてより高度に機能する肝組織の形成を目指し,これまでのスポンジ状ハイドロゲル材料の作製手法を用いた潅流培養系における至適条件の探索を実施した。またこれらに加えて,繊維状コラーゲン微粒子や断片化コラーゲンファイバーを内包した3次元的肝細胞培養系や,フロースルー型のスフェロイド潅流培養系などの開発を行った。スポンジ状ハイドロゲルを構成する材料としては,これまでに使用した光架橋性ゼラチンに加えて,今年度はフィブリンを採用し,血管内皮細胞を複合化した組織の形成を行った。アルギン酸を犠牲材料として用いることで多孔性のフィブリンゲルの形成が確認されたため,マイクロ流体デバイスへの複合化を行い,潅流培養系への適用を行ったところ,血管ネットワーク様構造の形成が確認された。また,繊維化コラーゲン微粒子を用いた培養系は,特に初代肝細胞の培養において効果を発揮することが確認されたほか,断片化コラーゲンファイバーを用いた実験系では,定量的PCR法によって肝細胞の機能上昇が確認されたのみならず,免疫染色によって肝細胞極性の再現に関わるタンパク質の発現向上が観察された。またさらに,流路に統合したフロースルー型の培養系を開発し,潅流培養によって肝細胞の生存率や機能の向上が確認された。これらの実験結果は,生きたまま細胞を導できる,あるいは細胞同士の密度を厳密に制御できる新規バイオマテリアルを用い,それらをマイクロ流体デバイスに統合した上で,さらに流量を制御したかん流培養のプロセスを最適化することが,肝細胞培養および生体外における肝細胞組織モデル形成において有用であることを示唆するものである。そのためこれらの手法は,特に創薬研究における応用が期待されうるものと期待される。
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Proceedings of the 24th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences
巻: - ページ: 849-850
http://chem.tf.chiba-u.jp/gacb01/