研究実績の概要 |
マサチューセッツ工科大学(MIT)のProf. M. Stranoらのグループが燃料電池を含む様々な種類の電池と全く異なる原理に基づいて発電が起こる現象である「熱力波(Thermopower wave)」を発見し、Nature Materialsに報告した(Nature Materials 9, 423 (2010))。本研究はこの熱力波を発電原理とし、かつStranoらが報告した発電デバイスの50倍以上の出力電圧を発生することができる実用レベルの新規発電デバイスを開発する。 本研究により、Stranoらが得た20 mVよりも50倍大きい1.0 Vを発生させる熱力波デバイスの作製に成功している。デバイスは石英管に充填した黒鉛粉を酸素の流れとともに燃焼するだけの簡単なものであるが、着火のために仕込む成分が発電量に大きな影響を与えることが分かった。その成分を模擬してNaH2PO4をグラファイト充填層に混合することが発電量を増加することも分かった。発電中に石英表面に生成する蒸着膜の役割が大きいことも実験によって分かってきた。 石英管内のグラファイトの燃焼の様子を高速カメラによって観察した。燃焼中に残留するグラファイト粉の充填状態が発電の経時変化に大きな変化を与えることが分かった。燃焼温度は1000℃を大きく超えるときがあり、運転条件が適切でないと石英管が融解する。安定した発電のためには燃焼状態を精密に制御することが重要であることがわかった。 独自の回路を作って発電特性を測定することにより、開放電圧、抵抗を変えた閉回路を通しての電流、最大電力の経時変化を測定し、発電特性の安定性を確認した。
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