研究課題/領域番号 |
18K18975
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60200200)
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研究分担者 |
田中 秀樹 信州大学, 先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所, 教授(特定雇用) (80376368) [辞退]
平塚 龍将 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (70806744) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | MOF / PSA / 自己熱補償能 |
研究実績の概要 |
ゲート吸着型MOFの優れた自己熱補償能およびCO2分離能を精緻に解析し,その特徴を最大限に発揮させるための新たな操作論・設計論確立を指向した研究開発に着手した。本年度は,昨年度構築した破過曲線測定デバイスおよびソフトウェアの運用を開始し,ブランク測定データをもとに,ハードウェア的・ソフトウェア的に大きく改善を施した。良好な測定が可能となった後は,前倒し支払請求書に記した通り,十分に研究がなされている活性炭に対しての破過曲線測定および開発したシミュレーションソフトウェアによる数値解析へと舵を切り,測定デバイスとシミュレータの健全性を確認した。さらに,ゲート型吸着剤が有する自己熱補償能による効果のみを抽出した系として,活性炭と潜熱型蓄熱材を混合した吸着層に対する実験・数値解析を実施し,相変化に伴う潜熱が吸着熱を吸収することにより,吸着性能が高いまま維持されることが実証された。一方で,蓄熱材混合に伴う活性炭充填量の減少が吸着カラム全体での吸着性能に与える影響が想像以上に大きいこともわかり,吸着剤としての機能と蓄熱材としての機能を同時に併せ持つゲート型材料の優位性が間接的に強調される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施した活性炭に対する検討は,元来の研究計画にはなかったものであるが,前倒し支払請求書に記載した通り,ゲート型吸着剤という未知の材料に挑戦する前に,開発したデバイス・ソフトウェアを盤石なものとすべく実施した次第である。実際に,装置・シミュレータの修正,改善は多数行われることとなり,本検討なしにゲート型吸着剤の検討に着手していた場合,測定・計算の不備なのかゲート型吸着剤ならではの特性なのかを判断できず,研究が滞ったものと考えられる。本年度の活動を通して健全性は十分に確認され,万全の状態でゲート型吸着剤の検討を行える体制となった。さらに,潜熱型蓄熱材を混合した検討により,単なる健全性の確認に留まらず自己熱補償能に関する有用な知見さえ得ることができた。目論見通り,本追加検討はむしろ当初の研究計画を加速するものになったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
ELM-11の各種混合ガス(CO2/N2, CO2/CH4)の破過曲線測定を実施することで,時々刻々のカラム内温度,圧力,ガス流量,ガス分率などの基礎データを取得し,新規非等温吸着速度モデルに基づくrapid PSAシミュレーションの実施を可能とすることを目指す。また,SPring-8における時分割in situ XRD測定によって,CO2吸脱着に伴うELM-11の構造転移速度のCO2ガス分圧依存性を明らかとし,上述の新規非等温吸着速度モデルに組み込むことを予定する。そして,rapid PSAシミュレータの開発を完了し,rapid PSAの高効率化のための新たな非等温吸着操作論の確立を目指す。そして,分離シーケンス,サイクルタイム,ガス流量・圧力など,膨大なパラメーターについての検討を実施し,ゲート吸着型MOFの優れた自己熱補償能およびCO2分離能を最大限に発揮させるための新たな操作論・設計論の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置のメンテナンスに伴う部品やガスボンベ等の消耗品を想定し前倒し請求を行ったが,研究が順調に進んだためその一部を使用せずにすんだ。この金額は前倒し支払請求額の一部,すなわち,元より次年度に使用する予定だったものであるので,当初の計画通り使用する。
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