研究課題
酵素応答性ペプチドをガン細胞の殺傷に応用する試みは、これまで多く報告されてきた。それらのほとんどは酵素によるペプチド分解を利用した既存の抗ガン剤のドラッグデリバリーシステムや、特定の器官へのターゲティングへであった。本研究では、これまで用いられてきた抗ガン剤は使用せず、ペプチドと炭素鎖から構成されるペプチド脂質自身が細胞内で変換されて抗ガン剤となるよう工夫した。特に、ガン細胞内で過剰発現している酵素を用いて、細胞内で抗ガン剤を作り出すよう抗ガン剤前駆体となるペプチド脂質デザインした。本手法はペプチド脂質の画期的な利用法となると同時に、このような作用機序であれば他のガン細胞にも応用が可能であるため、より効果的な抗ガン剤の開発に貢献できる可能性がある。ペプチド固相合成法によりチロシン含有ペプチド脂質を十数種類合成した。ヒト由来ガン細胞とヒト由来正常細胞について種細胞内のチロシンキナーゼ活性量の測定を行った。その結果、A431細胞内のチロシンキナーゼ活性量が他の細胞に比べ高いことが判明した。同様の細胞を用いて、十数種類のペプチド脂質が各種細胞に与える毒性について検討した。ペプチド脂質のスクリーニングを行ったところ、ペプチド脂質C16-EEEEYが皮膚ガン由来であるA431細胞に対して選択的な毒性を示した。つまりチロシンキナーゼ活性量と16-E4Yの細胞毒性に相関関係があることが示唆された。細胞破砕液のMALDI-TOF/MS分析により、C16-EEEEYは細胞内に取り込まれリン酸化されていることが明らかとなった。他の検討からC16-EEEEY と比べC16-EEEEpYの方が自己組織化しやすいことが示された。以上より、ペプチド脂質C16-EEEEYは細胞に取り込まれリン酸化されることで、細胞内で自己組織化体を形成し、A431細胞を死滅させたと考えられる。
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