脂質二分子膜からなる小胞体であるジャイアントリポソーム(GL)は生体膜モデルや人工細胞など幅広い研究領域で注目されているが、その安定性の低さや調製方法の難しさが更なる発展の制約となっている。本研究では、高い安定性を有するハイドロゲルをコアとした新奇な構造を有するGLの均一かつ高効率な形成手法の確立を目的として、下記の検討を行った。 安定なGLを高効率に形成する手法として、水相に分散したハイドロゲル粒子を脂質分子を溶解した油相に分散させ、油相から水相へ油水界面を通過させて再分散させ、ゲル粒子を脂質二分子膜で被覆しGL化する油水界面通過法の確立を行った。油相の溶媒組成を最適化し、高い親水性を有するハイドロゲル粒子を用いることで、ゲル粒子を水相に再分散させることができた。再分散したゲル粒子が脂質二分子膜で被覆された小胞体(=GL)であり、物質内包化が可能であることを確認するため、あらかじめ水溶性の蛍光物質を含有させたゲル粒子と蛍光標識脂質を用いて同様にGLの形成を行ったところ、再分散したゲル粒子からは水溶性蛍光物質の漏出は見られず、ゲル表面に脂質由来の蛍光が検出され、ゲル表面に脂質膜が形成されていることが確認できた。 GLの形態制御を行うため、GLのコアとして用いる異形ハイドロゲル粒子を形成するためのマイクロ流路の開発を行った。容易にゲル化が可能なアルギン酸を基材として選定し、異形粒子を得るためのゲル化方法を検討した。二つの十字構造からなるマイクロ流路を設計し、カルシウムを溶解した油相にアルギン酸水相を流入させることで、非球形のゲル粒子を形成することができた。さらに、得られたゲルを脂質膜で被覆することで、ゲル粒子の形状を反映した非球形のGLも得ることができた。 以上、本研究によりハイドロゲルをコアとしたGLの形成方法を確立し、GLの形態をゲルの形状により制御することができた。
|