研究課題/領域番号 |
18K18978
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金指 正言 広島大学, 工学研究科, 准教授 (10467764)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | オルガノシリカ / 耐熱性 / 分子ふるい / 膜 / アルカン脱水素 |
研究実績の概要 |
本研究では,従来のオルガノシリカ膜の課題であった耐熱性を向上させるために,ヒドロシリル化反応,CH3基の架橋反応を応用して超耐熱性オルガノシリカ構造を設計し,アモルファス構造におけるカーボン割合を制御することで,シリカ系膜の水熱安定性を大幅に向上させる。アモルファス構造内のカーボンによりネットワーク構造をルースに制御することで,従来のシリカ系材料,ゼオライトなどの耐熱性材料では細孔径が小さすぎる分離系,例えば,プロパン脱水素化への応用を目指す。 初年度は,ビニル基(SiCH=CH2)とヒドロシリル基(Si-H)をそれぞれ有するビニルトリメトキシシラン(Vinyltrimethoxysilane,VTMS),トリエトキシシラン(Triethoxysilane,TRIES),テトラメチルジシロキサン(Tetramethyldisiloxane,TMDSO)を共加水分解,縮重合させSi-O-Si結合をコアとするSQポリマーを調製した。ヒドロシリル化のタイミングがネットワークサイズに及ぼす影響について評価した結果,シリカネットワーク形成前にヒドロシリル化させると,熱処理後の細孔径が大きくなる可能性が示された。水素透過率が10-6 mol m-2 s-1 Pa-1以上の高水素透過性を有するSiOC膜が作製可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ヒドロシリル化,シラノール基の縮合,有機架橋反応により耐熱性SiOC構造設計とアルカン脱水素化のための水素分離膜の開発を目的としている。初年度の研究成果は,ヒドロシリル化のタイミングがネットワークサイズに及ぼす影響について評価したもので,シリカネットワーク形成前にヒドロシリル化させると,熱処理後の細孔径が大きくなる可能性が示され,水素透過率が10-6 mol m-2 s-1 Pa-1以上の高水素透過性を有するSiOC膜が作製可能であった。以上の研究成果は2年目に耐熱性,水素分離特性,膜型反応器の設計を行なう上で極めて有用な成果と言えるため,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
気体透過測定装置を用い,様々な気体の透過特性を検討する。特に,気体透過率の分子径依存性,温度依存性を詳細に検討し,SQゾル調製条件,ヒドロシリル化,有機架橋反応条件の最適化を図る。分離特性の評価は,純ガス透過試験と混合ガス透過試験を実施することで,透過ガスと膜材質(SiOC)との親和性,透過ガス分子間の相互作用が分離特性におよぼす影響について検討する。 膜型反応器の設計では,触媒には合成が比較的容易なPt/アルミナ系を用い,充填層型反応器を設計し,生成水素の選択的引き抜きがプロパン転化率へ及ぼす影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は膜分離に関連する国際会議が3件(12th Conference of the Aseanian Membrane Society (AMS12), 18th Asian Pacific Confederation of Chemical Engineering Congress (APCChE 2019), 13th Pacific Rim Conference on Ceramic and Glass Technology (PACRIM 13))開催されるため,成果発表,最新の研究動向を調査するため出席予定である。そのため,出張旅費,学会参加費を前年度よりも多く計上する必要があった。 2018年度に残額(1,422,468円)が生じたのは,製膜性の評価でTEMなどの依頼分析を行なう予定であったが,分離膜の透過性から製膜性を評価できることが明らかになり依頼分析を行なう必要がなくなったことと,情報収集のための国際会議への出席が都合が合わず叶わなかったためである。
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