本課題は、特異な協奏機能反応場を形成する集積型の固定化分子触媒の創製と環境低負荷型の精密合成プロセスへの適用に関する。特に、遷移金属触媒による精密リビング重合と定量的な末端官能基化を基盤に、形状・組成を緻密に制御した星型・球状ポリマー表面に機能の異なる錯体や活性化剤を担持・固定化することで、単独では見られない、集積化に基づく特異な協奏機能が発現する反応場を創製し、革新的な精密合成プロセスを開発することを最終目的としている。2020年度の成果は以下の通りである。 今迄の研究を通じて合成・同定した星型ポリマー表面に固定化したハーフメタロセン型のチタン錯体触媒を用い、エチレン重合やエチレンと1-ヘキセンとの共重合を、各種条件で得られるポリマーのミクロ構造も含めて、詳細に検討した。条件によっては固定化による共重合性能の向上が見られることから、これは球状ポリマー表面の協奏機能効果による可能性が考えられた(学術論文でEditor推薦のFront Coverとして紹介)。 フェノールとピリジン配位子を導入した星型ポリマー表面に導入し、ルテニウム錯体で処理することで固定化分子触媒を合成し、この触媒がピリジン単独での水素移行還元反応より高活性を示すことを明らかにした。現在、依存として論文化に向けて結果をまとめている途上であるが、所期の活性向上効果を観察しており、これはポリマー表面に性質の異なる官能基を並べた効果に起因すると考えた。 オレフィンメタセシス重合に関する国際共同研究や合成した星型ポリマーの特性解析にかかる共同研究の成果を学術論文としてまとめた。
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