研究課題/領域番号 |
18K18985
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三浦 篤志 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90379553)
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研究分担者 |
藤井 翔 北海道大学, 理学研究院, 助教 (90725425)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | リアルタイム結晶化 / 配向制御 / タンパク質 / レーザー捕捉 |
研究実績の概要 |
界面レーザー捕捉結晶化法では,光圧と微小物体の相互作用により集光点での局所的濃度上昇・高濃度液滴形成を誘起し,不飽和溶液からもたった一つの結晶を集光点からリアルタイムかつ短時間にその場で形成可能であり,結晶化の学理を研究可能な手法としても,実践的結晶化法としても高いポテンシャルを秘めている。しかし,動的な界面である開放系の気液界面に高強度レーザー光を照射して分子クラスターを捕捉する必要があり技術的に難しい。本研究は,これらの問題を解決する方策としてマイクロ流路中での固体基板へのレーザー照射による光熱変換で安定なマイクロバブルを形成し,このバブル界面でのレーザー捕捉により高濃度領域を形成し,ここへ外部摂動レーザー光を照射して分子配向を制御する事で,in-situかつリアルタイムなレーザー捕捉タンパク質結晶化を実現することを目指している。本年度はタンパク質分子配向のレーザー制御によるその場結晶化に必要不可欠な,外部摂動レーザー光の条件検討を中心に研究を展開した。フェムト秒パルスレーザー,ナノ秒パルスレーザー,CWレーザーなど様々な外部摂動レーザー光を界面レーザー捕捉により生成した高濃度領域へ導入し,外部摂動光の導入により高効率でのタンパク質分子微小固体の形成が可能であることを見いだした。パルスレーザーエネルギーやパルス幅,照射回数,照射レーザー光の偏光といったレーザー条件の詳細な検討より,気液界面におけるレーザー捕捉結晶化によるタンパク質分子のリアルタイム結晶化が可能であることを示す結果を得た。また,酸化物半導体への捕捉レーザー照射によるバブル形成条件の検討も進め,最適条件を見いだすとともに,マイクロ流路デバイスの作製法も確立しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度検討予定であった外部摂動レーザー条件の検討に関して,当初予定していたフェムト~ナノ秒パルスレーザー群のみならずCWレーザーも加え,照射する2本の偏光レーザー間の相対偏光角、偏光レーザー光の照射周波数や照射間隔、偏光等の照射条件を検討し、分子配向制御による微小固体形成誘起が可能であることを実験的に確認した。これらの検討より,レーザー照射下でのリアルタイムタンパク質結晶化が可能であることを明示する結果を得ており,大きな進展が得られている。上記の結晶性固体形成誘起の確認に加え,レーザーにより誘起される高濃度領域中のタンパクの配向変化の顕微分光測定と結晶形成挙動の顕微イメージングより、配向制御レーザー照射による高濃度・高分子配向領域における分子配向変化を示唆する結果も得られつつある。酸化物半導体基板を用いた市販流路デバイスでのバブル形成条件の検討より,レーザー捕捉条件下においても安定なバブル形成が可能であることを確認し,自作した微細流路構造中での実験に向けた準備も進めており,当初の計画に沿って概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本手法を新規タンパク質結晶化の方法論として昇華するためには、モデルタンパク質のみならず様々なタンパク質で本手法により簡便に結晶化を誘起可能であることを実証する必要がある。そこで、これまでに得られた知見を基に本手法を異なるタンパク質へと展開する。
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