研究課題
本申請研究では、世界的に行われていないグラフェン超伝導体およびグラフェンナノリボン超伝導体を実現するための金属被覆グラフェン・グラフェンナノリボンを作製し、申請者が得意とする材料の電子状態を直接観測することが可能なARPESを行うことで、それらの超伝導発現機構を解明することが目的である。本年度は、昨年度整備したグラフェン超伝導体およびグラフェンナノリボン超伝導体開発を行った。まず、グラフェン超伝導体に関しては、SiC上に作製した単層グラフェンにカリウム(K)原子を80K程度の低温で蒸着することで、2X2の超周期構造の観測に成功した。この構造はグラファイト層間化合物(GICs)において超伝導を示すC8Kと呼ばれるバルク体が有する超周期構造と類似している。そこで、その電子状態を明らかにする目的で、高分解能ARPESを行ったところ、2X2の超周期構造によって変調を受けたディラック電子状態のみならず新たな自由電子的な2次元電子ガスの観測に成功した。この電子状態は、GICsに置いて超伝導を発現する上で重要な自由電子状態の可能性があり、興味深いことにその電子状態がフェルミ準位近傍で、ディラック電子状態と混成している可能性を見出した。すなわち上記の結果は、ディラック電子および自由電子状態の混合状態下で超伝導が発現している可能性が期待できる。また、グラフェンナノリボン超伝導体に関しては、SiC基板のステップ構造を利用して作製を引き続き進めており、高品質なグラフェンナノリボンおよびその超伝導化を実現可能な状況にある。今後も、グラフェンに関する超伝導研究を強力に進めていく。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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