“Si(100)極薄膜における再配列現象によってダイヤモンド構造から非ダイヤモンド構造へと結晶構造転換”できる可能性について実験的検証を進めた。具体的には、第1に、Si基板上へのGeのエピタキシャル成長の面内膜厚分布と結晶性を調査した結果、膜厚が薄い領域は単結晶である一方、膜厚が厚くなる領域は双晶となり、良好な単結晶Ge薄膜を得るためには堆積速度の制御が重要であることがわかった。第2に、Ge/Si/Geヘテロ構造に規則的に配置された開口穴と橋脚構造を形成するためのフォトマスクセットを設計・製作した。開口穴を一定間隔で多数配置することで横方向ウェットエッチングに掛かる時間を短縮するとともに、Si極薄膜へのダメージが少なくなるように配慮したマスクデザインとした。第3に、Geエピタキシャル層の表面に数nm厚のSi極薄膜とキャップGe薄膜を積層してGe/Si/Geヘテロ構造を形成するとともに、レジストパターン形成2回とドライエッチング1回を行うことにより橋脚構造を形成し、過酸化水素水に浸漬することにより、開口穴からの横方向にGeのエッチングが進行し、開口穴の直径が広がる様子を確認した。この結果から、Si極薄膜がエッチングマスクとして機能するとともに選択的にGeエッチングが進行し、本手法によりSi極薄膜宙づり構造が実現できる見通しが得られた。第4に、低エネルギープラズマ照射によるSi(100)面の表面水素結合振動モードの変化から、Si(100)面に特有なダイハイドライド構造からモノハイドライド構造への変化を確認し、基板非加熱下で再配列ダイマー構造形成を促進できることを確認できた。以上の内容に計画より時間が掛かったため、当初目標としていた宙づりSi極薄膜構造の写し取りとその物性評価には至らなかったが、本手法によってさらに研究を進めていくための有用な指針が得られた。
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