研究課題/領域番号 |
18K18989
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
近藤 剛弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70373305)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 2次元物質 / ホウ化水素 / ボロファン / 硼素 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,我々が世界で初めて単離生成を実現して2017年に論文発表した新規2次元物質であるホウ化水素(ボロファン)シート[J. Am. Chem. Soc. 139 (2017) 13761-13769.]を用い,新しい触媒材料群を創出することです。ホウ化水素シートは二ホウ化マグネシウム(MgB2)のマグネシウム正イオンと水素の正イオン(プロトン)とをイオン交換して劈開することで生成したシート状の物質です。触媒作用において有利となる表面積が広いという特徴(理論最大値:4068 m2/g)があり,水素がプロトンとして物質内に存在しているため,固体酸の性質を示すという特徴があります。 本年度は研究計画に沿ってエタノール改質反応をテスト反応とみなして,ホウ化水素シートの触媒特性について触媒反応素過程や活性化障壁や頻度因子の算出などの基礎科学的な解析を行いました.まずホウ化水素上で493 K以上の温度でエタノールの転換が起きることがわかりました .次にガスクロマトグラフ解析により主要な生成物としてC2H4が検出され, 12時間以上同程度の触媒活性の維持が確認され,得られる炭化水素の総量がホウ化水素のホウ素数の2倍以上であることがわかりました.そしてこのことにより, ホウ化水素がC2H5OH → C2H4 + H2Oの反応に対する触媒作用をもつ固体酸触媒であることが示されました. アレニウスプロットにより活性化エネルギーが103 kJ/molであることがわかり,赤外分光を用いた解析により反応が多段階で起きていることが示されました。次年度以降に反応メカニズムの詳細な挙動を同位体を用いた解析から解明するとともに,研究計画に沿って他の触媒反応への応用の検討を行い,新規触媒群の創成を進めます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホウ化水素のモル数以上の生成物の検出や転化率の維持,選択率がガス流速/触媒質量に依存しないことなどから,ホウ化水素シートがC2H5OH → C2H4 + H2Oの反応に対する触媒作用をもつ固体酸触媒であることを明確に示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
エタノールの転換反応については引き続き赤外分光などを駆使した反応メカニズムの詳細な挙動を同位体を用いた解析から解明するとともに,研究計画に沿って他の触媒反応への応用の検討を行い,新規触媒群の創成を進めます。
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次年度使用額が生じた理由 |
反応メカニズム解析用の赤外吸収分光システムについて,温度を可変としてガス雰囲気下で且つ高感度に解析ができるようにセルを設計しなおす必要が生じたため設計を行い次年度に作成を行うこととしたため次年度使用額が生じました。セルの構築については次年度に行うこととして予定を変更し,残りの使用計画は当初の計画に沿って進める予定です。
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