研究課題
本研究では、独自開発した原子レベル熱ナノインプリントプロセスにより、高耐熱ポリイミド樹脂などのフレキシブルポリマー基板表面を、Si基板並みの単原子レベル(約0.3nm高)周期的ステップ構造を有する超平坦にした後に、原子ステップエッジでの選択的結晶成長などを利用して、ZnO、In2O3、Ga2O3などの半導性酸化物や金などのナノワイヤー・ナノドット構造を直接ポリマー上に構築することで、電気伝導や発光特性における量子機能性を評価し、世界初のフレキシブル量子機能素子の創製をめざすものである。本年度の研究において、型押し用の鋳型として0.2~0.3nm高さの直線状原子ステップサファイア(単結晶アルミナ)基板を用いて、熱ナノインプリント装置により、真空下、非晶質ポリマーの軟化温度付近(100℃~300℃)で、数MPa程度の加圧で、(加熱→型押し→離型)を経て原子レベルナノパターン転写を行った。その後、パルスレーザーアブレーション成膜(PLD)により、原子ステップポリマー基板上に、ワイドギャップ半導体として有用なZnO超薄膜を堆積したところ、通常ポリマー基板上堆積の時よりも結晶性が向上し、電気伝導率も一桁以上向上した。これは、原子ステップポリマー基板の超平坦上での結晶核形成がより均一であり、面内結晶成長が促進されたことにより、結晶性向上に伴う粒界散乱の低減と電子移動度向上が起因していると思われた。この結果から、膜厚が数nmレベルのZnO量子薄膜における光学特性における量子機能発現が期待される。
2: おおむね順調に進展している
研究途中で、ナノインプリント加工装置やレーザー成膜装置などの故障があり、当初の見込みよりも研究成果が出ないのではと危惧されたが、実験遂行の工夫を重ね、効率的な研究遂行を実施した結果、種々の興味ある研究結果とおおむね期待通りの成果を挙げることができている。従って、おおむね順調に進展しているといえる。
2018年度に得られた成果をベースにして、ポリマー基板上での成膜パラメーターや結晶化条件の最適化を図り、原子ステップポリマー基板上でのZnOなどの半導性酸化物薄膜のナノ構造(超薄膜、ナノ細線、ナノドットなど)の構築を系統的に行って、それらの光や電気特性における量子機能の評価を精力的に遂行する。
(理由)研究自体はほぼ順調に進展しているが、実験に使用する消耗品等の購入が、想定以下に推移したために、次年度使用額が生じた。(使用計画)今年度では、想定以上のより多くの成果を達成すべく、実験遂行をより加速して研究を進めることで、研究費目毎の使用を適切に実行するとともに、研究成果を国際的によりアピールすべく、種々の国際会議に精力的に参加する予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 4309-1,4309-9
10.1038/s41598-019-41049-9
Applied Surface Science
巻: 480 ページ: 956, 961
10.1016/j.apsusc.2019.01.189
Jpn. J. Appl. Phys. Vol.58 (2019)
巻: 58 ページ: SAAD06-1,4
DOI: 10.7567/1347-4065/aaec11
http://www.yoshimoto.iem.titech.ac.jp/