d電子に由来する機能性を持つ金属類は、光学材料としてのプラズモン共鳴がd電子の局在性に由来して弱くなる傾向にあり、機能性プラズモニック材料の実現は本質的に難しい。この二律背反な性質の両立に関して、金属の電子状態に手を加えないでプラズモン共鳴を強める方策として、長距離伝搬型の表面プラズモンを利用する工夫が本研究課題の主題であった。 昨年度に実施した電磁場シミュレーションと実験との比較から、様々な化学反応に対して高い触媒活性を持つ白金を例にとり、効率的に長距離伝搬型の表面プラズモンが励起される電極構造の基本設計が完了していた。本年度は、設計した電極を設置利用できる分光電気化学セルを設計・製作し、長距離伝搬モードを利用した表面増強ラマン分光計測のin-situ測定を実際に行った。その結果、白金表面における吸着種を高感度に計測することに成功し、その電気化学応答の検出にも初めて成功した。その信号増強度は、現時点で従来の報告の100倍程度の高効率化を達成していた。また理論上は、10000倍の感度向上が見込まれることも明らかにした。これにより、プラズモン共鳴の弱い金属表面で強い電場増強効果を得ることが可能であることを確認した。更に、白金以外の機能性金属についても同等の効果が期待されることを確認し、本手法が汎用的かつ有効な方法であることを明らかにした。また、白金の触媒効果とプラズモン共鳴との融合機能の検証を行うため、プラズモン誘起化学反応が起こると期待されているモデル分子を使った測定も実施した。
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