本研究は,マイクロウェルアレイ電極を用いた誘電泳動による超高速で簡便な細胞アレイ作製技術を基盤とした,「目的とする抗体を産生するB細胞のハイスループットな選択」,「異種細胞アレイの形成と細胞融合による高効率なハイブリドーマ形成」および「捕捉されたポジティブ細胞の選択回収」を可能とする細胞チップの開発を目的とした. 正の誘電泳動を用いた大量一括,迅速,簡便に単一細胞アレイの形成および負の誘電泳動を用いた標的細胞のウェル外放出ができた.ウェルを高密度化した場合には,標的細胞の存在するウェルに負の誘電泳動をそれ以外のウェルに正の誘電泳動を作用させることにより,標的細胞の放出が可能であった.抗体を分泌するハイブリドーマと分泌しないミエローマ細胞の混合サンプルを用い,混合懸濁液の中から標的のハイブリドーマを識別した.ここでは,ハイブリドーマが産生する抗体をウェルに固定化した抗原に捕捉し蛍光ラベルすることによりハイブリドーマの識別を達成した.標的細胞の存在率が1%の場合に標的の細胞を迅速で簡便に識別できた.抗原固定化ウェルを用いた場合には,ハイブリドーマの膜表面に提示された抗体による免疫反応により,ハイブリドーマがウェル内に非可逆的捕捉されてウェル外への放出が困難であった.そこで,分泌された抗体を細胞膜表面に固定化した抗原に捕捉することにより,ハイブリドーマの識別と負の誘電泳動によるウェル外への放出が可能であった. 免疫化マウスから摘出したB細胞を含む脾臓細胞を用い,脾臓細胞アレイの作製とミエローマ細胞との単一異種細胞ペアをマイクロウェル内で形成した.このウェル内に捕捉された細胞を融合でき,形成されたわずかなハイブリドーマを識別できた.さらに,作製された細胞を確実に回収するために,電気泳動および電気浸透流現象を利用したガラス電極を作製し,ガラス電極を用いた細胞の操作を評価した.
|