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2018 年度 実施状況報告書

動的・定量的解析のための極限イメージング技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K19010
研究機関一般財団法人ファインセラミックスセンター

研究代表者

川崎 忠寛  一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主任研究員 (10372533)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワード電子顕微鏡 / 高空間分解能 / 高時間分解能
研究実績の概要

本年度は高空間・高時間分解能の電子顕微鏡技術として独自に発案したEnhanced Hollow-cone Illumination TEM法の最適条件の検討を実施した。入射電子ビームの傾斜角度、傾斜角変調幅をシミュレーションにより決定した。また、本手法は光学系に収差(特に球面収差)があると上手く動作しない。そのため、許容される球面収差係数の値を評価した結果、μmオーダーの残存収差であれば許されることが判明した。モデル結晶(SrTiO3)に対して本手法を適用した結果、通常のTEMでは可視化されない酸素からなる原子カラムが明瞭に解像されることを確認した。また、リチウムイオン電池電極材料への適用を想定し、LiCoO2中のLiイオンの可視化についても検討を行い、Liカラムがコントラストが低いながらも観察できることを明らかにした。
また、高空間分解能観察に向けては、新しい収差補正技術の開発にも取り組んだ。従来の多極子を用いた装置では無く、円環状スリットおよび円孔を設けた2枚の電極間に電圧を印加して発生する電場で球面収差補正をする手法である。これを汎用SEMに搭載することを念頭に開発した。現状では、電極のチャージアップ等の問題を解決しながら目標分解能に迫っている。
応用研究として、生体試料の動的観察について検討を行った。生体試料は基本的に培養液中でしか生存できないが、電子顕微鏡内は真空のためそのままでは観察が不可能である。この問題を克服するために液体と真空とを極薄膜で隔てる技術を開発した。膜には単層のグラフェンを用い、2枚のグラフェン間に大腸菌を含む培養液をサンドイッチすることで電子顕微鏡観察することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、グラフェンを用いた液体試料のパッキング技術の確立を目指して、グラフェンを成膜するためのCVD装置を導入する予定であった。しかし、装置は既製品ではないため、仕様検討などに時間がかかり、最終的には次年度に持ち越しとなった。
それ以外については予定通りに進捗している。

今後の研究の推進方策

シミュレーション検討したEnhanced Hollow-cone Illumination TEM法について、実機での検証実験を実施する予定である。
応用研究である生体試料観察については、グラフェン膜の成膜技術を確立しつつ、大腸菌などの細菌(無害化したもの)の挙動を動的に観察することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

当初予定では、グラフェンを成膜するためのCVD装置を導入する予定であった。しかし、既製品では無いため必要部材を購入して自作することを検討していた。その仕様検討に時間がかかり部品の納入が年度内に間に合わなかったため、、次年度に予算を繰り越して執行することとした。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] グラフェンサンドによる超高圧雰囲気電子顕微鏡観察法2019

    • 著者名/発表者名
      佐々木祐生、川﨑忠寛
    • 雑誌名

      まてりあ

      巻: 57 ページ: 601-601

    • DOI

      10.2320/materia.57.610

  • [雑誌論文] Effect of pulse parameter change on a-SiCN diaphragms for environmental cells fabricated by2019

    • 著者名/発表者名
      Murano Masanori、Matsutani Takaomi、Kawasaki Tadahiro
    • 雑誌名

      Vacuum

      巻: 57 ページ: 60-64

    • DOI

      10.1016/j.vacuum.2019.03.043

  • [雑誌論文] Surface modification of triacetylcellulose by low-energy nitrogen ions for diaphragm of2018

    • 著者名/発表者名
      Matsutani Takaomi、Murano Masanori、Kawasaki Tadahiro
    • 雑誌名

      Surface and Coatings Technology

      巻: 344 ページ: 58-61

    • DOI

      10.1016/j.surfcoat.2018.02.092

  • [学会発表] 汎用SEM用の電界型収差補正器の開発2018

    • 著者名/発表者名
      川﨑忠寛、吉田竜視、加藤丈晴、野間口恒典、本村俊一、西中健一、揚村寿英、富田正弘、生田孝
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会学術講演会
  • [学会発表] Spherical Aberration Correction for SEMs with Electrostatic-type compact Cs-corrector2018

    • 著者名/発表者名
      Tadahiro Kawasaki, Ryuji Yoshida, Takeharu Kato1, Tsunenori Nomaguchi, Shunichi Motomura, Kenichi Nishinaka, Toshihide
    • 学会等名
      Microscopy &Microanalysis 2018
  • [図書] 最新実用真空技術総覧2019

    • 著者名/発表者名
      川﨑忠寛、他
    • 総ページ数
      1095
    • 出版者
      エヌ・ティー・エス
    • ISBN
      978-4-86043-559-2
  • [図書] Compendium of Surface and Interface Analysis2018

    • 著者名/発表者名
      T. Kawasaki, et al.
    • 総ページ数
      853
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-981-10-6155-4

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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