研究課題/領域番号 |
18K19019
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹中 康司 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60283454)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | アクチュエータ / 硫化サマリウム / 価数揺動 / 体積変化 |
研究実績の概要 |
電場による非線形伝導と歪の同時計測を実現するシステムの構築に取り組み、手動制御ではあるものの、測定ができるレベルまで達成できた。この暫定測定系を用い、SmS純良焼結体について、液体窒素に浸す状態での測定を行い、電場の印可により600 ppm程度の負の歪(収縮)を観測することに成功した。負の歪みと同時に非線形伝導(=絶縁体-金属転移)が生じていることも観測できた。これは、電場により金属相(golden phase)に転移し、それにともない体積が収縮したことを示唆する初めての実験結果である。ただ、この実験では電流が流れてしまう状況での測定であり、金属相への転移に際し、印可電場の大きさ限界があることや大きなジュール熱が発生していることなど、多くの問題がある。今後は、電極間に絶縁層を設けたり、樹脂との複合化試料を用いたりなど、キャパシター構造にして、電流が流れない状況での測定を行う。 これまでに、SmSのSmサイトを一部、YやCeなどの希土類元素で置換することで、Sm4f電子の価数揺動を誘起できることが知られていた。従来の単結晶育成に比べ低温短時間で、より簡便な、古層反応法による焼結体育成法を独自に考案し、様々なドーパント(CeやNdなど)を含むSmS焼結体の育成に成功した。熱膨張評価より、これらの焼結体がこれまでの報告よりも高い温度から大きな等方的負熱膨張を発現することを見出した。アクチュエータ材料としては、電場をかける前がぎりぎり絶縁体相(black phase)である必要があるので、ドープ量を抑えた試料合成にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度のうちに測定システムの自動化まで見込んでいたが、実験システムの仕様を固めることに時間を要し、資材の調達が遅れたため、手動の状態にとどまった。しかしながら、自動化については年度の後半に本格化し、来年度の冒頭には完成の見込みである。一方で、手動ではあるが、電場誘起歪の検証まで達成できた。総合的に考えて、研究計画の全体には影響しないと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
測定システムの自動化を早急に立ち上げて、時間、電場、電流、歪の自動制御・計測を達成する。また端子の工夫などから純粋に電場の影響だけを調べる実験を行う。初年度では液体窒素温度の測定であったが、純粋に電場の影響を調べるセットアップにより、室温での測定を行う。材料面では、純粋なSmSではなく、ドープ系を用いることで、より小さな電場で歪みを誘起することを目指す。また、ドープ系を用いることで、black-golden相転移ではなく、クロスオーバー的にして、電場に対して歪が線形的に発現するようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では初年度のうちに測定システムの自動化まで見込んでいたが、実験システムの仕様を固めることに時間を要し、資材の調達が遅れたため、経費の一部を次年度に持ち越した。この自動化の取り組みは次年度の初期(~6月まで)に完了する見込みでり、それにともない、持ち越した経費を使用する。
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