研究課題
光検出磁気共鳴計測を活用してダイヤモンド表面に構築した神経細胞回路の自発発火を表面近傍のNVセンターを介して計測できる手法を構築する。具体的には,(1)ガラス基板上で培ってきた,表面マイクロパターニングによる神経細胞回路の構築法を,これまで神経細胞足場として活用されたことがないダイヤモンド表面でも実行可能にする第1段階と,(2)ダイヤモンド表面に構築した実神経細胞回路を伝搬するパルス電流を,NVセンタを磁気プロ―ブとする光検出磁気共鳴法によって,リアルタイムかつ長期間にわたって計測できる方法論を構築する第2段階とからなる。2018年度には共焦点顕微鏡上で長期間にわたって神経細胞を培養できる環境の構築と、上記(1)の段階に着手した。前者については、共焦点顕微鏡のステージにマウントできる小型の細胞培養装置を自作し、やはり自作した小型の温湿度および二酸化炭素濃度制御装置にそれを接続した。温湿度および二酸化炭素濃度の制御に関する問題は今のところ見られていない。ダイヤモンド基板を介して神経細胞と対物レンズとの間に励起光および蛍光を通す必要があるが、この部分の設計・試作については2019年度に持ち越すこととした。後者の(1)については、Ibダイヤモンド(100)基板表面を窒素終端したもの、またはその表面にポリリジンをコートしたものを用意し、ラット初代培養を行って、神経細胞の接着および成長を評価した。当初期待した窒素終端表面に神経細胞は接着せず、ポリリジンコート表面で神経細胞は遜色なく成長することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
共焦点顕微鏡に搭載する小型の細胞培養装置を自作することにより、やはりそれまでに自作されていた共焦点顕微鏡のステージに整合性よくマウントできたため。これにより、ダイヤモンド基板と対物レンズとの間の仕様についても2019年度に問題なく進められる見通しである。
上記の(1)第1段階と,(2)第2段階とのうち、2019年度に(1)を完了し、2020年度に向けて順次(2)に移行する方針をとる。第一段階では、①CVDダイヤモンド表面に対する電子線リソグラフィとプラズマ処理によるダイヤモンド表面終端基(酸素終端表面/水素終端表面)のパターニング(連携者:早稲田大・川原田洋教授)、②接着分子の自己吸着特性を利用した神経細胞の足場パターン(細胞接着表面/細胞非接着表面)の形成、③胎生18日ラット大脳皮質神経細胞の播種とパターン形状に沿った神経細胞の長期培養法の構築を行う。第2段階では、下記①から③の実験を通して、ダイヤモンド上の神経細胞回路の自発発火をNVセンターで捕捉する:①単一NVセンター配列およびアンサンブル系(δドープ層)上に構築したモデル系(金属配線等)を用いた直流磁場計測、②単一NVセンター配列上への神経細胞回路のアライメントおよび長期培養と自発発火計測、③NVセンターのアンサンブル系(δドープ層)での長期培養と自発発火計測を試みる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
J. Phys. Chem. C
巻: 123 ページ: 3594-3604
10.1021/acs.jpcc.8b11274
Science Advances
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