研究課題
ダイヤモンド表面での実神経細胞回路の構築とNVセンタを用いた自発発火活動の長期計測を目的として研究を進めた。前者に関しては、昨年度までに、ダイヤモンド表面を細胞接着分子と非接着分子でパターニングし、パターン上でラット大脳皮質神経細胞、または、ラット海馬神経細胞の初代培養(約20日間)を行うことにより達成できる実験結果を得ていた。後者に関しては、NVセンタの電荷安定性と感度に課題が残り、これらを向上させる改良が2020年度に必要となっていた。ナノ構造中にNVセンタを形成することで、これを達成することを計画していたが、コロナウィルスによる実験設備使用上の制限などにより、現時点で、NVセンタを用いた自発発火活動の計測に成功していない。一方、構築される実神経細胞回路がどのような自発発火パターンを示すか、についてのシミュレーションを積極的に進め、これに関して、下記の成果を得た。表面パターン上の接着領域内に単一神経細胞が1個だけで接着するように分散して、孤立した状態で成長させると、この単一神経細胞の軸索は自身の樹状突起とのシナプス結合(オータプス)のみを形成する。このようなオータプスは、神経細胞回路の最小の帰還接続と見なせる。このようにして成長したオータプスが、その細胞の長期間の自発発火の結果、どのような振る舞いを見せるかについて、ホジキン-ハックスレイモデルにスパイク依存性可塑性を加えた単一神経細胞モデルをシミュレーション上に構築した。その結果、帰還接続を伝搬する伝搬遅延時間に応じて、オータプスの接続強度が増強、または、抑圧されることを見出した。さらに、この結果はオータプスのみならず、複数細胞を経由する一般的な帰還接続でも起こりうることを見出した。これは、帰還接続を有する神経細胞回路のシナプス強度の時間変化に関する一般的な原理の1つになりえる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Electrochemistry
巻: なし ページ: 21-00032
10.5796/electrochemistry.21-00032
Nano Express
巻: 未定 ページ: 100438
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Biosystems
巻: 198 ページ: 104278
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