研究課題/領域番号 |
18K19037
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柳谷 隆彦 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (10450652)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 圧電薄膜 |
研究実績の概要 |
スマートフォン向けの周波数フィルタは国際ローミングの影響で一台に50個以上搭載され、高いものでは1個数十円以上にもなり、10年後の大きな市場に向けて各メーカが凌ぎを削っている。このフィルタの圧電材料の電気機械結合係数が大きいほど通過帯域を広くすることができ、挿入損失も低くすることができる。そんななか近年、希土類のScをAlNにドープした薄膜において、大きな電気機械結合係数が得られることが発見され、実用化されつつある。 本研究では、高価なScの代替材料として安価で中国に依存しない元素(以後Reと記載)に注目した。低酸素、低炭素の希土類スパッタターゲット作製プロセスを構築し、ReとAlNの組み合わせおいて圧電性特性を調べた。自作の電子ビーム照射による真空溶融装置を用いて、炭素るつぼ内でReとAlを昇温還元・合金化した。高真空チャンバー内で熱電子放出により電子ビームを発生させて照射・昇温させる。この低酸素、低炭素の精製プロセスにより作製したReAlN圧電薄膜のXRDパターンを測定した。 (0002)ピークが観測されc軸方向に優先配向していることが確認できた。しかしながら、結晶化度はさほど高くなく下地の高配向Ti電極のピークに近い強度になっている。ロッキングカーブ半値幅は3.0°と改善に余地はあるが音波励振には十分な配向性であった。 次に薄膜音響共振子(HBAR)を作製し、ネットワークアナライザを用いてRF電力を印加し、UHF帯において、超音波の送波・受波を試みた。時間波形信号をフーリエ変換して得た変換損失の周波数応答を測定した。500MHz付近の薄膜の厚み縦共振点で変換損失が小さくなり、超音波を効率良く送受波していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回XRDパターンでは (0002)ピークが観測されc軸方向に優先配向していることが確認できた。しかしながら、結晶化度はさほど高くなく下地の高配向Ti電極のピークに近い強度になっている。ロッキングカーブ半値幅は3.0°と改善に余地はあるが音波励振には十分な配向性を得ることができた。 次に薄膜音響共振子(HBAR)を作製し、ネットワークアナライザを用いてRF電力を印加し、UHF帯において、超音波の送波・受波を試みている。時間波形信号をフーリエ変換して得た変換損失の周波数応答を測定した結果、500MHz付近の薄膜の厚み縦共振点で変換損失が小さくなり、超音波を効率良く送受波していることが確認された。以上のことから当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今回、電気機械伝送回路モデルを用いて計算した理論変換損失カーブと、共振点の最小変換損失で比較することにより、電気機械結合係数 kt2を見積もった。その結果、kt2=4.8%となり、結晶化度と配向性が不十分な割には良好な値を得た。今後さらに低酸素化を進めて結晶性を向上し、圧電性を調査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より消耗品材料を研究室在庫でまかなえたため、実験の分量の多い次年度に持ち越す。
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