本研究の目的は,1)赤外吸収メタマテリアルにおいて,その光吸収効率を最大限に高めるための最適な構造を洗い出し,実際にそれを試作することと,キルヒホッフの法則より光吸収率と光輻射率は同値なので2)高効率光吸収体を極限的な効率を持つ光輻射デバイスに応用することである.これまでに,数理学的最適化アルゴリズムを用いて光効率な赤外吸収体の構造を設計したので,それを参考に銀ナノパッチアレイ構造で構成される赤外吸収構造を電子ビームリソグラフィ等を利用して試作した.試作したメタマテリアル赤外吸収構造は,直径1.75 μmの銀パッチがCaF2層(膜厚60 nm)を挟んで銀薄膜上に形成してあり,波長6 μmに吸収ピークを持つように設計してある.この吸収波長は500.15 Kの黒体輻射のピーク波長に一致させている.このメタマテリアル吸収構造を大きさ1 cm角,厚さ1 mmのBi2Te3の熱電変換素子の端面に装荷した.このデバイスを均一な熱輻射が得られる電熱炉の中に設置して熱電特性を評価した.このデバイスでは,メタマテリアル赤外吸収の有無で光吸収効率が異なるので,均一な熱輻射下においても電極間に温度差を生じさせることができる.実験では,メタマテリアル吸収体を装荷したユニットセルの数を変えたデバイスを準備して,メタマテリアル吸収体構造の効果を調べた.その結果,ユニットセルの数を増やすとともに,電極間の温度差は大きくなり,最大でメタマテリアル吸収体を装荷しない場合と比べて10倍以上の温度差を発生されることができることを確認した.そして,トータルの電力密度として1.09 mW/cm2の電力を得る事に成功した.
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