本研究では,超臨界地熱資源の形成環境を考慮して,最高温度500℃程度,最大三軸応力100 MPa程度までの条件下の花崗岩に対して,世界初となる最大・中 間・最小主応力を独立に制御(地下の応力場をより忠実に再現)した真三軸応力下での超臨界水圧破砕実験を実施し,水圧破砕に関する新しい学術体系の創出に 向けた第一歩を踏み出すことを目的とする。地層条件(温度や地殻応力場等)と破砕条件(井戸に対する主応力の方向や加圧速度等)が,き裂発生に要する水圧 レベルや,き裂進展パターン,さらには透水性増加に及ぼす影響を系統的かつ定量的に検討し,超臨界水圧破砕の基礎理論構築を目指すとともに,高透水性・網状き裂システム形成法を明らかにする。 昨年度までに,当初計画通り,超臨界水圧破砕の実験手法を新たに確立し,様々な温度,応力場,孔の向きおよび坑内加圧速度の組みあせ条件下において水圧破砕実験を実施した。その結果,超臨界地熱条件では温度等の条件によらず,き裂発生に要する水圧レベルは既存き裂を起点とした破壊を仮定するGriffithの破壊基準に概ね一致すること,つまり岩石内部の既存微視き裂の高温・低粘性水による刺激にともない等方的に密に分布するき裂群からなるき裂ネットワークが形成されること,そして形成される透水性は最大で 10^-12 m^2程度に達しうることが明らかになってきていた。つまり,最終目標となる超臨界水圧破砕の基礎理論の構築と,高透水性・網状き裂システム形成法の導出が概ね完了していた。 そこで本年度は,当初計画通りに,いくつかの補足実験・解析を実施することで,超臨界水圧破砕の基礎理論および高透水性・網状き裂システム形成法をより明確なものとし,国際学術雑誌上で公表した。
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