本研究は、持続可能な資源利用を実現するために、レアメタルを選択的に濃縮・回収できる生物工学技術の開発を目的として行ってきた。レアメタルの生物学的濃縮・回収技術の確立のため、金属応答遺伝子の探索を行った結果、水銀耐性細菌Bacillus megaterium MB24株を発見し、そのゲノムに水銀解毒遺伝子群とヒ素解毒遺伝子群を併せ持ち、しかも両者ともトランスポソンという水平伝播可能なカセットにあること、さらにヒ素解毒遺伝子群は水銀解毒遺伝子群の間に挿入されているというかなり特殊な構造を有することを明らかにした。これらの成果を英文論文としてMicroorganismsに投稿し、掲載が決定されている。 一方、レアメタルのモリブデンの生物濃縮について、昨年度に作製したモリブデン吸着ModEタンパク質を発現させ、モリブデンの吸着を可能にする酵母を基に、より高い吸着効率を示した酵母株の作製に成功した。ラングミュア吸着等温線により改良した酵母のモリブデン吸着挙動を解析した結果、5から1000ppmと広範囲のモリブデン濃度に対し優れた吸着性を示したことを確認した。さらにこの酵母を固定化することにより、吸着量が上昇することが示された。上記の研究成果は、2019年8月に細菌学若手の会にて初めて発表し、さらに2019年10月福岡に開催された国際会議「International Biometallrugy Symposium 2019」において、演題「Molybdate recovery using immobilized bioengineered Saccharomyces cerevisiae」として発表した。現在同タイトルの英文論文として執筆中であり、2020年5月に投稿する予定である。
|