研究実績の概要 |
原子力で発生する使用済燃料再処理で発生する高レベル廃液において、マイナーアクチノイド(MA)とランタノイド(Ln)といったf元素分離は放射毒性の大幅低減とごみの安定・減溶化に繋がる。しかしf元素の化学的性質の類似性からMA/Ln分離剤開発は世界的な手詰まり状態にある。閉塞状態を打破するため, 本研究では刺激応答性ゲルを用いた“錯形成空間の制御”による高度分離の実験的・理論的成立性を探索することを目的とした。配位子をゲルに取り込ませることで新たに増える諸因子(局所水環境変化、高分子鎖、ゲル膨潤収縮特性等)が選択的錯形成・イオン認識に及ぼす影響, 溶液中とゲル中の錯体構造の差異を種々の分析化学・溶液化学的手法, 構造的手法を用いた調査により、錯形成空間制御に基づくf元素高度認識・分離達成を目指す。 二年目は初年度に合成、物性評価を開始したf元素イオン認識用のN,O-ハイブリッドドナー系配位子を搭載した感温性ゲル抽出剤を用いて、f元素イオン吸着性能を調査を継続するとともに、体積相転移温度付近において昇温過程のランタノイドイオン周りの局所構造の変化を時分割XAFS実験(SPring-8 BL14B1)によって、また各温度での小角散乱実験(Photon Factory, BL6A)により錯体構造と高分子物性の相関を調査した。その結果、今回用いたゲルは低温で膨潤、高温で収縮するNIPAを基本骨格としているが、昇温による体積相転移による金属イオンの濃縮と共に、高分子物性の変化に伴う錯体構造変化が配位子の搭載条件によっては確認することができた。
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