研究課題/領域番号 |
18K19046
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田中 徹 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20325591)
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研究分担者 |
齊藤 勝彦 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 助教 (40380795)
郭 其新 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 教授 (60243995)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 高不整合材料 / 人工光合成 / マルチバンドギャップ半導体 |
研究実績の概要 |
太陽光と水を利用して水素を生成する人工光合成は、将来の持続可能な社会の実現に向け、二酸化炭素など温室効果ガスを削減しながら、無尽蔵かつ貯蔵可能な次世代エネルギー創製技術として大きな期待が寄せられている。効率向上のためには、太陽光に含まれる可視光の吸収により、酸化還元反応を効率良く起こすことができる材料の開発が重要な課題の一つである。 本研究では、従来の半導体混晶と異なりユニークなバンドエンジニアリングが可能となる高不整合半導体材料に着目し、人工光合成応用に適したエネルギーバンドを実現することで、これまでにない新たな人工光合成システムを開拓することを目的としている。2019年度は以下の研究を実施した。 (1) 分子線エピタキシー法により高不整合材料ZnTeO薄膜を成長し、人工光合成応用のために必要な物性評価を行った。その結果、ZnOにTeを添加したO-rich ZnTeO薄膜においては、成長時の基板温度と薄膜に含有する酸素濃度および結晶性の関係を明らかにすることができた。また、ZnTeにOを添加したTe-rich ZnTeO薄膜においては、成長中の酸素供給量と薄膜中の酸素濃度の関係を明らかにするとともに、薄膜の酸素濃度の変化による光吸収特性の変化を明らかにした。 (2) 高不整合材料ZnSeOの母体となるZnSeについても分子線エピタキシー法により成長実験を進めた。成長時のII/VIフラックス比や成長温度が膜特性に与える影響について詳細に評価することにより、最適な成長条件を明らかにした。また、銅酸化物についても検討を開始した。 (3) 作製した試料に金属電極を堆積した後、所定の溶液に浸し、光照射時の光化学反応特性の評価を行った結果、試料から溶液への電子移動が生じている結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各項目ともに研究計画に沿っておおむね順調に研究を進めてきている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に得られた結果をもとにして、以下のように研究を進める。 (1) ZnTeO薄膜に関しては、分子線エピタキシー法により種々の組成を有する高品質薄膜の成長を行い、物性評価を行う。 (2) ZnSe系薄膜に関しては高品質薄膜が得られる成長条件を基板洗浄方法等も含めて追究する。銅酸化物についても検討を進める。 (3) (1)(2)で成長した種々の薄膜に対して、光化学反応の評価を行い、膜特性と光化学反応特性との関係を明らかにすることで、本材料系における材料設計の指針を得ようとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で用いている材料は前例のない材料であるため、最適な光化学反応評価装置の決定に時間を要している。これに加え、新型コロナの影響により学会が中止となったことで旅費として確保していた予算を繰り越した。装置の選定は他大学の協力を得て、ほぼ確定しているので、繰り越した予算を用いて、次年度に評価装置を購入し、また他の予算は当初の計画に沿って、実験に必要な原材料費、基板費用、学会等への出張旅費等に用いる。
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