研究実績の概要 |
太陽光と水を利用して水素を生成する人工光合成は,将来の持続可能な社会の実現に向け,二酸化炭素など温室効果ガスを削減しながら,無尽蔵かつ貯蔵可能な次世代エネルギー創製技術として大きな期待が寄せられている。効率向上のためには,太陽光に含まれる可視光の吸収により,酸化還元反応を効率良く起こすことができる材料の開発が重要な課題の一つである。 本研究では,従来の半導体混晶と異なりユニークなバンドエンジニアリングが可能となる高不整合半導体材料に着目し,人工光合成応用に適したエネルギーバンドを実現することで,これまでにない新たな人工光合成システムを開拓することを目的としている。2021年度は以下の研究を実施した。 (1) 分子線エピタキシー法で作製したZnTeO薄膜の単層膜およびヘテロ接合構造の試料を用いて,水素発生に関する実験を行い,定量的な評価を行った。ZnTeO単層膜では水素発生量は小さかったが,n-ZnSとのヘテロ接合構造試料においては定常的な水素発生を確認することができた。 (2) ZnTe薄膜に対しても分子線エピタキシー法により作製した単層膜およびヘテロ構造の試料を用いて,水素発生の実験を行い,定量的な評価を行った。その結果,(1)と同様にn-ZnSとのヘテロ接合構造試料において大きな水素発生を確認することができた。 (3) さらなる特性向上に向けてn-ZnS, ZnTe, ZnTeO, p-ZnTeの各層の膜厚を変化させたサンプルを作製し,水素発生量との相関を明らかにした。また,n型窓層として可能性のあるZnCdOについても検討を行った。
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