研究実績の概要 |
トリウム燃料の代表的な再処理法は、抽出溶媒としてリン酸トリブチルをドデカンに溶解したものを用いるが、Th(IV)の抽出錯体の溶解性が低く、第三相を形成することが課題となっている。また、トリウム酸化物が酸に溶解しにくいため、燃料溶解液としてフッ化水素を含む高濃度硝酸が用いられ、反応性の高い水溶液からの安定な抽出も改善点として上げられる。これに対し、イオン液体は電解質媒体であり、一般有機溶媒に比べて抽出錯体の溶解性は高いと予想される。また、フルオラス溶媒は極めて安定であり、フッ化水素や高濃度硝酸に対して十分な耐久性が期待できる。 Th(IV)の模擬元素としてCe(IV)を用いた抽出試験を行い、イオン液体1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム-ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(OMI-Tf2N)と抽出剤の塩化トリオクチルメチルアンモニウム(TOMAC)を組合せることで高い抽出能を見出した。新たに、リン酸トリブチルをフルオラス化したホスフェート型フルオラス抽出剤(TBP-C4F9)を用いたフルオラス抽出系とTOMAC/OMITf2N抽出系を組合せ、トリウム燃料再処理法への適用性について検討した。フッ化ナトリウムとCe(IV)の他に核分裂生成物の主要元素としてSr(II), Zr(IV), Pd(II), Cs(I), Nd(III)を含む硝酸水溶液を燃料溶解液の模擬液として使用した。フルオラス抽出系と模擬液間の分配において、Ce(IV)と共にZr(IV)の一部が同伴することが分かった。このフルオラス相をTOMAC/OMITf2Nと接触させると、フルオラス相中のCe(IV)はイオン液体相へ抽出され、一方、Zr(IV)はCe(IV)に同伴しないことが分かった。以上から、トリウム燃料溶解液からフルオラス抽出相を介し、イオン液体相へCe(IV)を選択的に回収できることが明らかになった。
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