研究課題/領域番号 |
18K19048
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
田中 万也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (60377992)
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研究分担者 |
山路 恵子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00420076)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 微生物 / アクチノイド / 希土類元素 |
研究実績の概要 |
アクチノイドが環境水中において水和イオンや無機・有機錯体として溶存しているのか、それとも周囲の岩石・堆積物中の鉱物表面に吸着し固定されるのかによってその後の移行過程が大きく左右される。特に、四価のアクチノイドは溶解度が低く鉱物表面に吸着するか、ウランのようにそれ自体が鉱物化(ウラニナイト)することにより固相として固定される。一方で、微生物活動の活発な環境では四価アクチノイドが水中に溶存した状態で移行しやすい化学形態になる可能性がある。そこで、本研究では実際の環境中において微生物が四価アクチノイドを可溶化する有機化合物を産生しているのかを明らかにすることを目的とした。 北海道足寄町にあるオンネトー湯の滝では活発な微生物活動によりマンガン酸化物が形成している。そこで今年度は、湯の滝において採取したこれら生物性マンガン酸化物と水試料の希土類元素濃度の分析を行った。その結果、湯の滝水試料には一般的な環境水中に含まれる希土類元素よりも高い濃度が検出された。このことは活発な微生物活動により産生された有機化合物と希土類元素が水中で錯体を形成している可能性を示唆している。したがって、ウランやトリウムなども同様に可溶化している可能性がある。昨年度に引き続き原子力機構人形峠環境技術センター内において、旧ウラン鉱山の坑道から発生する坑水試料を採取してウラン及びトリウムの分析を行った。また、サイズ排除型カラムを用いたHPLC-ICP-MSを用いてこれら湯の滝水試料や人形峠坑水試料中の有機化合物と希土類元素、ウラン、トリウムの錯体形成の有無を調べるための分析方法の検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オンネトー湯の滝水試料や人形峠のウラン鉱山坑水の希土類元素、ウラン、トリウムの分析が予定通り進んでいる。また、微生物由来の有機化合物との錯体形成を調べるための分析にも着手しており、当初の研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
サイズ排除型カラムを用いたHPLC-ICP-MSを用いて湯の滝水試料や人形峠坑水中の有機化合物と希土類元素、ウラン、トリウムの錯体形成の有無を調べる。また、オンネトー湯の滝で採取したマンガン酸化物からマンガン酸化菌等の微生物を単離する。それらがシデロフォア等の四価アクチノイドを可溶化する有機化合物を産生しているのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
化学分析において使用する試薬や分析機器に使用するガスの量を当初の計画よりも減らすことが出来たので、その分予算を節約することが出来た。この差額は来年度の試薬の購入、成果発表のための旅費、論文投稿のための諸経費として活用したい。
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